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韓国で「背が伸びる注射」としての成長ホルモン剤使用に再警告、誤用や不正広告に注意喚起、韓国食品医薬品安全処(MFDS)が2025年7月に再度発信

韓国で「背が伸びる注射」としての成長ホルモン剤使用に再警告(Sipa USA/時事通信フォト)

韓国で「背が伸びる注射」としての成長ホルモン剤使用に再警告(Sipa USA/時事通信フォト)

 「背が伸びる注射」などとして成長ホルモン製剤が安易に使われている実態に対して、韓国で再び警告が発信された。

 韓国食品医薬品安全処(MFDS)は2025年7月21日、成長ホルモン製剤の誤用を防ぐための注意喚起を発表した。

韓国では不正行為の摘発も

・成長ホルモンの誤用リスク:本来は特定疾患(下垂体成長ホルモン分泌障害など)の治療薬だが、「背を伸ばす」「美容目的」といった誤解から安易な使用が拡大。副作用として末端肥大症、関節痛、浮腫、注射部位の内出血などが報告されている。
・韓国当局の警告と対応:MFDSは繰り返し注意喚起しており、2025年3月には不正広告・販売221件を摘発。オンラインや中古取引での違法販売が問題視されている。
・医療現場での適正使用の重要性:成長ホルモン剤は、医師の指導の下、承認された疾患に対してのみ使用すべきと明確に示されている。

 医療機関が、「背を伸ばす」とうたった広告を出しているのを、日本国内で見ることがある。こうした医療機関がどのような医療を提供しているかは明らかではないが、成長ホルモンが使用されている可能性がある場合には、注意が必要だ。

 韓国では、政府関連機関であるMFDSが、成長ホルモンを「背を伸ばす」目的で使用したり、それに関連した広告を行う行為について、繰り返し注意喚起してきた。

 このたびMFDSが新たな警告を公表した。

 成長ホルモン製剤は、本来は下垂体成長ホルモン分泌障害、ターナー症候群、特発性低身長など特定の病気に用いる医薬品として使用されている。にもかかわらず、「身長が伸びる薬」や「美容目的での使用」といった誤解が広まり、一部で安易に使用される例がある。

 MFDSは今回、誤用が子どもたちの健康に及ぼすリスクを改めて指摘。病気でもない人に対して長期間使用した場合、末端肥大症、浮腫、関節痛といった副作用が起こる恐れがあると問題視している。注射部位の痛みや内出血といった特定部位での有害事象も発生しやすいと報告されている。

 2024年10月にもMFDSは同様の警告を発している。成長ホルモン剤は、あくまで医師の指導の下、承認された対象疾患の治療に限って使用すべきだと、MFDSは強調している。

 さらにMFDSは2025年3月に成長ホルモン剤の不当広告や不正な販売行為を221件摘発したと報告していた。特に「身長が伸びる」とうたうオンライン広告や中古取引での製剤の売買が多数確認されていた。

日本にも同様な問題が存在している

・日本の専門学会も誤用に警鐘:2024年8月、日本小児内分泌学会と日本内分泌学会が「承認外の使用では効果が得られず有害なことが起こる可能性がある」と公式に明記。対象疾患に限定した使用が強く求められている。
・SNS・広告経由の誤認拡大:「背が伸びる」とうたう医療行為がSNSやウェブ広告を通じて拡散し、医薬品の誤用による健康被害リスクが拡大している。
・韓国の警告、日本への示唆:韓国当局による成長ホルモン製剤の誤用への度重なる警告は、日本でも安全な医療と適正使用を求める動きの重要性を再確認させるものとなっている。

 日本でも2024年8月、日本小児内分泌学会と日本内分泌学会が「承認された対象疾患以外の病気や低身長に使用すると、効果が得られないことが多く、また、有害なことが起こる可能性があります」と明記された。成長ホルモン製剤の使用は、対象疾患を守る必要があるとされている。

 SNSやウェブ広告を通じて「背が伸びる」とうたう医療行為が広がっている中で、医薬品の誤用による健康被害のリスクは国境を越えて共通の課題となっている。

 韓国での繰り返しの警告は、日本においても成長ホルモン製剤の適切な使用や安全な医療が求められていることが示されている。

参考文献

성장호르몬 주사, 키 크는 주사가 아닙니다

「身長が伸びる」サプリや薬、韓国で広告が問題に、成長ホルモン剤の違法販売も、韓国では成長ホルモン乱用が問題、韓国食品医薬品安全処(MFDS)が不当広告・違法流通を摘発

「背を伸ばす注射」に 韓国当局が警告 成長ホルモン乱用に懸念、「低身長の治療をうたう医療広告」日本にも問題潜在、韓国食品医薬品安全処(MFDS)が2024年10月に発表

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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