よい写真を、よいプレーを見てもらいたいという素朴な気持ちからだったが(イメージ写真)
SNSの利用が急拡大した当初、子供の姿を知人に見せるため、親がみずからすすんで写真や動画を公開したものだった。ところが、スマートフォンが普及しSNS利用が当たり前になると、悪意ある第三者の介入による実害が発生するようになり、撮影しても、それをどのように取り扱うかには神経をつかう。ライターの宮添優氏が、子供たちの撮影と共有をめぐる混乱についてレポートする。
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「みんな笑顔で本当にいい写真でした。だから、消してくださいとは誰も言い出せなかったんです」
千葉県在住の専業主婦の女性(30代)がそう言って見せてくれたのは、あるSNSの公開アカウントにアップされたという、数十人の子供たちが、サッカーユニフォーム姿で楽しそうに映る写真。主婦はなぜ「消してほしい」と願ったのか。
「チームの取り決めとして、子供の写真をSNSにアップすることは基本的に禁止でした。どうしてもというときは、保護者だけなど限定公開で共有していました。
しかし、カメラが得意だという新入生のパパが、ルールをご存知なかったようで、自慢のカメラで撮影した綺麗な写真を何枚も、公開範囲を限定させていないSNSに出してしまった。ただ、どれもプロ並みのいい写真であることは間違いないし、パパさんも身銭を切って撮影してくれている。だから本人に直接、ノーといえず、モヤモヤしっぱなし。一部の親からは強烈なクレームも出て、子供数人からも”自分の写真を他人に見られたくない”という声も上がりました。結局、誰かがコーチに相談をして、コーチや監督経由でその親御さんにお話がいって」
この写真公開事件は、決して悪意によるものではない。だが、善意から起きてしまったことだと分かるからこそ、周囲も指摘しづらい。そして、折角の和気藹々とした保護者たちの雰囲気が悪くしたくないなど様々な要因から、皆が口をつぐんでいたが、内心では、我が子のプライバシーについて大いに不安な気持ちが晴れない。結局、コーチや監督の働きかけもあり投稿は取り下げられた。
このとき保護者たちがつくづく思い知ったのは、いくら事前に取り決めをしていようと、様々な理由で写真や動画は、どこかから漏れるということだ。
チームメイトの良いプレーを見てほしい
「プレーの映像など、絶対にSNSにはあげません。いくら子供たちのスポーツとは言え真剣勝負。そうした映像を公開SNSにアップすることは、いわば、自チームの情報を”敵に流した”ことと変わらないし、プライバシー的にも問題がある。そのあたりはしっかり、保護者のみなさんにも子供にも、伝えています」