国際情報

戦場取材に欠かせない「フィクサー」とは? ウクライナ入りした報道カメラマンが紹介された“取材に愛犬を連れて来る男” ギャラは「1日1500ドル」と法外な金額に

ウクライナ取材のフィクサー(コーディネーター)のリシェット(撮影・横田徹)

ウクライナ取材のフィクサー(コーディネーター)のリシェット(撮影・横田徹)

 ロシアからの侵攻を受け、今も戦闘が続くウクライナ。米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領がアラスカで首脳会談に臨むこととなり改めて注目が高まっているが、最前線で何が起きているのかを報道するのは容易なことではない。

 これまでにアフガニスタンやイラク、シリアなどで戦場取材を重ねてきた報道カメラマン・横田徹氏は、2022年5月から2025年3月まで、7度にわたりウクライナを現地取材。2022年2月の開戦当初は、コロナ禍によるブランクがあったためウクライナを取材するつもりはなかったという。だが、開戦から2か月ほどが過ぎたタイミングで、ネットメディアを立ち上げるつもりだという会社社長を知人に紹介され、「もし私が1万ドルを用意すればウクライナに行きますか?」と声を掛けられたことから、ウクライナ行きを決意した。

 そこから横田氏は、予想外のアクシデントの数々に見舞われながらも、戦地の様子を発信してきた。その取材成果が新著『戦場で笑う 砲声響くウクライナで兵士は寿司をほおばり、老婆たちは談笑する』(朝日新聞出版刊)にまとめられている。2022年5月、最初にウクライナに向かった横田氏を待ち受けていたものとは。同書より一部抜粋・再構成して紹介する。【前後編の前編】

 * * *
 海外取材、特に紛争地の取材をする際にはフィクサー(コーディネーター)の存在は不可欠で、その人選には慎重にならないといけない。フィクサーの役割は取材先の許可を取り、スケジュールを調整するのはもちろん、外国人取材者の通訳や咄嗟の危険の察知も含まれる。我儘を言わせてもらえば取材先で美味しいレストランを見つける嗅覚を持ち、そして長距離移動でも疲れない車、特に新型のSUVを持っていれば尚よい。経験豊富なフィクサーに依頼すれば自分の望む取材が円滑に進むが、優秀なフィクサーはギャラが高いものだ。

日給1500ドルってアリか?

 ウクライナ行きの航空券も予約した。現地で取材を続ける知人のジャーナリストからフィクサーを紹介する手配師の連絡先を教えてもらい、ウクライナ東部の従軍取材をしたいという内容のメッセージを送ると翌日に連絡が入った。

「私はジョージア部隊の司令官です。あなたの取材の手助けができればと思います」

 フィクサーを頼んだはずなのに何故、司令官から連絡がくるのだろう? ウクライナ軍ではなくジョージア部隊? 疑問だらけだった。もしかしたら紛争地ではよくある外国人ジャーナリストを狙った詐欺ではなかろうかと疑った。とりあえず今回の取材目的をざっと箇条書きで送ると数時間後に電話が鳴った。

「司令官から紹介されたリシェットです。今回の取材日程と何を取材したいか詳しく教えてください」

 とても流暢な英語で矢継ぎ早に質問をしてくる。戦闘が行われている東部に行く場合、1日のフィクサー代は1500ドルと提示してきた。キーウで取材中の知人からは1日300ドルと聞いていた。私の1カ月の家賃よりも高い法外な金額に絶句した。この男、何者なのだ? ウクライナが初めてということでカモられているのではないか。しかしマルチ商法の営業マンに匹敵する勢いに押されてとりあえず数日間だけでも仕事をしてみてから判断しようと思った。私の懐には例の社長から預かった1万ドルがあるのだ。

「ではキーウで会えるのを楽しみにしてます。それと、もしよろしければ取材の際は愛犬を同行させても良いですか?」

 突拍子もない要求に頭が混乱する。犬を連れて戦場を取材するジャーナリストなんて聞いたことがなく、命がけで戦っている兵士から叩き出されるだろう。でも犬は嫌いではない。邪魔なら車の中で待たせておけばいいと安易に考え承諾して、電話を切るとすぐに1枚の写真が送られてきた。そこにはカメラを睨む獰猛なドーベルマンが写っていた。

関連記事

トピックス

国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
公明党票の行方が当落を左右する選挙区も(時事通信フォト)
【2・8総選挙「東京11〜20区」の最新情勢】復活期す下村博文氏、文科相の松本洋平氏の戦いぶりは? 「公明離脱」の影響の大きさにより明暗が分かれそうな展開へ
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
晩餐会に出席した真美子さんと大谷(提供:soya0801_mlb)
《真美子さんとアイコンタクトで微笑み合って》大谷翔平夫妻がファンを驚かせた晩餐会での“サイレント入退場”「トイレかなと思ったら帰っていた」
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン
畠山愛理と鈴木誠也(本人のinstagram/時事通信)
《シカゴの牛角で庶民派ディナーも》鈴木誠也が畠山愛理の肩を抱き寄せて…「温かいご飯を食べてほしい」愛妻が明かした献身性、広告関係者は「大谷&真美子に引けを取らないパワーカップル」と絶賛
NEWSポストセブン
第74回関東東海花の展覧会を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《雪の精のよう》佳子さま、ゴールドが映える全身ホワイトコーデに上がる賞賛の声 白の種類を変えてメリハリを出すテクニック
NEWSポストセブン
アワードディナーに初めて出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《鎖骨見せワンショルで“別人級”》大谷翔平の妻・真美子さん、晩餐会ファッションで見せたジャパン推しの“バランス感覚”【専門家が解説】
NEWSポストセブン
インフルエンサーのニコレッテ(20)
《南米で女性398人が誘拐・行方不明》「男たちが無理やり引きずり出し…」メキシコで人気インフルエンサー(20)が生きた状態で発見される【生々しい拉致映像が拡散】
NEWSポストセブン