頭蓋骨骨折、顔面骨骨折をきたしたCT像(中永氏提供)
「顔については形成外科の先生が頑張ってくれましたし、手足の怪我は整形外科の先生が頑張りました。昔に比べると、血管縫合の技術が進歩して、再建術はすごく綺麗にできるようになっています。顔が綺麗に治ったのには、私も驚きました。鼻もちゃんと通るようになって、多少、表情の動きにぎこちなさが残りましたが、ほぼ問題ありません」
ただ、クマの攻撃で傷を負うのは体だけではない。心にも大きな傷を負うという。
「なんでもないときにツーッと涙が出たり、クマに襲われる悪夢を毎晩見たりと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する患者さんが多い。畑で襲われた方は、『怖くてもう畑に行けなくなった』と言っていました。交通事故などによる怪我とは異なり、野生動物に襲われたショックは人間にとって別物のようで、精神的なケアが重要になります」
人間の本能に植え付けられる恐怖感は、非常に大きいのだ——後編記事では、中永教授が語った「クマと会った時に顔を怪我しない対策法」と、「クマと人間のあるべき距離感」について詳報している。
(後編につづく)