頭蓋骨骨折、顔面骨骨折をきたしたCT像(中永氏提供)
「里に下りてきて、倉庫にある米だとか柿の木の実だとかを食べ、人間の食べ物の味を覚えてしまったクマは、仮に捕獲して山に帰しても必ずまた里に下りてきます。そういうクマは駆除するしかありません。
クマが生活するテリトリーは、昔と比べると確かに広がってきていると感じる。それは、かつてクマを狩る存在だった“マタギ”が減少したことで、クマが人間に対して恐怖を覚えなくなったこと、また純粋にクマの頭数が増加したという背景もあるのではないかと思います。そういう意味でも、2023年、被害件数が多かった年にクマを多く狩ったことで、翌年の被害件数は減少しましたよね。
人間がクマのテリトリーに入っていく必要はありませんが、人間とクマがそれぞれの生活を守るために、距離感を保っていかなければいけないと思います」
これからクマは冬眠に向け、エサを求めて行動範囲を広げていく。クマとの接触はできるだけ避け、万が一遭遇した場合も、中永教授の「防衛術」を参照するべきだろう。
(了。前編から読む)