事案発生は法改正の直前
冒頭の文春報道により、Aさん側は密室での出来事は法的に「不同意性交等罪」に当たる行為と認識していたことが窺えるが、今に至るまでなぜ刑事事件にならないのか。
「Aさん側が出したとされる通知書で『該当しうる』と書いた不同意性交等罪は、(被害者の告訴がなくても起訴できる)非親告罪です。ただし、被害者のプライバシーの問題もあり、捜査機関が被害者の訴えなくして立件するのは現実的には考えにくい。
また内容はわかりませんが、中居氏とAさんの示談内容のなかに守秘義務のほか『刑事告訴しない』『刑事告訴を望まない』といった条項が盛り込まれている可能性もあるでしょう」(同前)
だが、示談を「破棄」することになれば状況は変わる可能性がある。
「示談金を返金するなどして和解契約を解消し、被害女性が刑事告訴に進むという選択肢があるにはある。ただし一方的な示談契約の破棄は紛争を招く恐れがある。現在の見解の食い違いや守秘義務の問題を解消するために双方が示談解消で合意する場合などに限られるでしょう」(同前)
仮に示談が解消され、刑事告訴するとなった際には事案発生の“タイミング”が影響するという。
「不同意性交等罪は2023年7月施行の改正刑法で強制性交等罪から改称され、具体的な暴力や脅迫がなくても“経済的・社会的関係の地位に基づく影響力”で拒否できなければ同罪が認められるようになりました。
しかし、この事案が起きたのは改正法施行前の同年6月のため、旧法の強制性交等罪の規定に沿って調べられることになります」(同前)
両者が反論を続けるなか、今後、守秘義務解除の可能性はあるのか。
Aさんの代理人弁護士は守秘義務解除の可能性については無回答だったが、反論文書を公表した中居氏側の対応についてこう述べた。
「被害女性やその代理人である当職が守秘義務違反をしているかのように述べて、こちらに攻撃の矛先を向けて来ていると感じています。なによりもこれ以上、被害者を苦しめるのはやめていただきたいです。
このような文書を公表することによって、当方に非があるかのような情報を流布することは卑劣なやり方であると言わざるをえません」
一方、中居氏側代理人弁護士に取材を申し込んだが、期日までに回答は得られなかった。
いつまでも終わらない騒動は、どこに帰着するのか。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号