芸能

高田文夫氏が明かす、出会って50年になる坂本九さんの思い出 元付き人の石倉三郎と飲みながら大切に、優しくされたことを語り合う

坂本九さんの思い出を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

坂本九さんとの思い出を振り返る(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、坂本九さんと森田芳光さんについて。

 * * *
 お盆という季節がそうさせるのか、やたらなつかしい人の顔を想い出す。若き日、私の感性を刺激し火を付けてくれた男ふたり。

 昭和100年、放送100年、戦後80年、私が出会って50年、そして没後40年……そう坂本九(享年43)である。日航機墜落事故から40年の歳月が流れたのだ。

 私は若き日、NHKの子供番組で九さんと会った。20代の私はどんな番組だって台本を書きまくっていた。その時、九さんの付き人として働いていたのが石倉三郎だ。私より少し年上の兄さんだがサブちゃんとはすぐに気が合った。

 なんたって坂本九とくれば『上を向いて歩こう』が世界へ行き『スキヤキ』となって大爆発、思わず私は玉子をといた。三郎はシラタキがこんがらがっていた。

 嬉しいことにこの度、坂本九のベスト盤「坂本九」がCD3枚に全56曲、あの明るいトークも収められて出るときく。私も三郎も本当に九さんには大切に、優しくされて育った。テレビで見るあの笑顔そのままの人なのだ。

 先日六本木のライブハウスへ“寺尾聰”を聞きに行った。開演前なのにもう酔っている寺尾と石倉三郎らがいた。「ああ来た来た。まずはハイッ、ビール」。私もクイ~ッ。“追っかけ”らしきおばさまでいっぱい。寺尾のギターと歌にウットリ。並んで聞いていた三郎が私をこづいて「こうして高田ちゃんと歌を聞いてるとなんか九さんを想い出すねぇ」には参った。20代の三郎と私はいつも上を向いていた。私の心の師・永六輔の詞である。ベスト盤は8月20日に発売される。

 ふたり目は私のひとつ下、素晴しい映画を創り続けた映画監督・森田芳光である。私と同じ渋谷で生まれ、同じ日芸にすすみ、同じ落研にいた。大学2年にして名人の誉れ高かった私は森田の下手さにあきれ、製作者への道をすすめた。

 それから10年、少し世に出た私を追って1981年森田は『の・ようなもの』で衝撃のデビューを飾る。主役の駄目な落語家(伊藤克信)は森田のこと、売れてる明るい先輩役(尾藤イサオ)は私そのものだった。映画の中の尾藤は常に私と同じVANのシャツを着ていた。森田と私、渋谷生まれのおしゃれな町っ子なのだ。それよりもおしゃれだったのが秋吉久美子のトルコ嬢(今はソープ嬢というらしい)。色町育ちの森田は風俗の女性を吉原の時代のように暗く哀しくはしたくなかった。逆に最もファッショナブルな女性として描いた。

 その「森田芳光展」が8月12日から11月30日まで国立映画アーカイブ展示室(京橋)。小道具などいっぱい出るらしい。是非。

※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン