「東洋大の正式な卒業証書」のコピーを見る、シースルージャケット姿の田久保市長(共同通信)
伊東市にある田久保劇場とは違う物語
で、何が言いたいかというと、伊東市の市議選の方なの。実は先日、伊東市に行ってみたのよ。この夏中、テレビやネットで報じられていた田久保眞紀市長(55才)の騒動を現地の人はどう見ているのか知りたくて。
伊東には道の駅・マリンタウンへ3か月に1度くらい訪れている。海の見える温泉と休憩所が好きで、ひとりでも行くんだよね。でも伊東の町中を最後に歩いたのは……やだ、もう20年も経つんだわ。そのときはバブル期に温泉特集で取材した街々とそんなに印象が変わっていなかったけれど──この20年で何がどうなったのよ!? 目抜き通りのアーケード街は8割がシャッターを下ろしているし、「田久保市長をどう思う?」と聞きたくても、人が歩いていないんだから。
ようやく100均の店で40代女性から話が聞けたんだけど、これが意外だったんだよね。「テレビでは悪く言うばかりだけど、そんな人じゃないって話も私のところには入ってくるのよ。学歴を偽ったこととかすぐに認めなかったのはどうかと思うけど、かといって全部ダメみたいに言うのは違うと思う」と語るのよ。
土砂降りの中、駅まで乗せてもらったタクシーの運転手さんは「政治? 興味ないね。この町じゃ、誰がやっても同じだよ。だからこんなに寂れたんじゃないか」と吐き捨てるように言うんだわ。テレビには現代建築の市庁舎ばかり映るから、けっこう栄えているのかなと思いがちだけど、実際は全然違う。てことは、伊東市には田久保劇場とは違う物語がありそうなんだよね。
というのも、地方都市のことが語られるとき、「失われた30年」っていう言葉がよく使われるじゃない。好景気に乗じてインフラを次々に整備したものの、バブルが弾けて以降、高齢化やら人口流出やらですっかり活気がなくなって、要は何をしてもうまくいかなかった地域があちこちにあるんだよね。てことはもう、日本全国いち早く世代交代しないと、どうにもならないところまできてるんじゃないかな、と伊東市内をさまよい歩きながら思ったのでした。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2025年10月9日号