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「ハグしませんか?」朝ドラ『あんぱん』で嵩の戦友“調子のいい粕谷”を演じた田中俊介が明かす、撮影前に妻夫木聡からかけられた忘れられない言葉

小倉連隊の軍曹・粕谷将輝役を演じた田中俊介(写真提供/NHK)

 9月26日に最終回を迎えるNHK朝ドラ『あんぱん』。放送開始以来、作品の人気を支えてきたのが主人公2人を取り巻く個性豊かなキャラクターたちだった。柳井嵩(北村匠海)が所属した小倉連隊の軍曹・粕谷将輝役を演じた田中俊介が、役への思いや撮影時の秘話を語った。

 * * *
 柳井嵩や八木信之助の戦友でもある粕谷ですが、正直、戦地で柳井に命じた任務がうまくいった時も自分の手柄かのようにご満悦になってしまう、少しズルいというか、調子のいい人物だと思い、演じていました。

 戦後、柳井が漫画の道で成功した時も、内心、「俺が宣撫班に誘っていなければ今の柳井は存在しない!」と思ってしまうような(そのようなシーン・セリフはありませんが)、調子のよさを秘めて演じていました。

 見ようによっては愛嬌に思える部分と、戦争に行ったことで根付いてしまった鋭さとのバランスを意識したのです。

「ハグしませんか?」

 九州コットンセンターでの撮影初日、戦争パート以来初めてお会いした時の妻夫木さんからのこの言葉は忘れられません。

 八木と粕谷の関係性において、本編では描かれていない空白の時間を埋める手段として、撮影前にハグをしないかと提案してくださったのです。

 役の芯の部分を形成するのにとても重要な瞬間でした。尊敬できる先輩との出会いに感謝です。

 八木と蘭子の2人が現場で醸し出す雰囲気は、前室のモニターで食い入るように見ました。実はここだけの話、八木と蘭子が2人でいる場を粕谷が目撃するシーンがカットされているんです。粕谷はそこに入り込まず、大正解でしたね(笑)。

 アンパンマンの初回放送を、八木、アキラ、蘭子とともに4人で見届ける場面が、僕の撮影最終日、ラストシーンでした。

 横を見ると老けメイクをしているみんながそこにいて、一緒に歳を重ね、一緒に放送を見るシチュエーションがエモすぎて、泣きそうになりました。

 その涙はシーンとして不必要だと判断し、必死に堪えました。

 役の一生を演じる俳優がいて、その役に寄り添い支えるスタッフ、そして、役の人生を見守り続ける視聴者がいる。朝ドラだからこそ味わえ、朝ドラだからこそお届けできる楽しみがありました。

【プロフィール】
田中俊介 (たなか・しゅんすけ)/1990年生まれ、愛知県出身。主な出演作品に映画『ゆきてかへらぬ』『十一人の賊軍』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、舞台『三人吉三廓初買』など。

※週刊ポスト2025年10月3日号

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