レギュラー出演の弘中綾香アナ(インスタグラムより)

テレビに出たときの一般人は面白い 

 1つ目のポイントは、「テレビ番組に出る一般人は面白い」という再認識。 

 構成・演出のしやすさ、リスクの少なさなどを理由に、一般人が街頭インタビュー以外で出演するバラエティ減り、「どの番組も芸能人ばかり」の状態が長年続いていました。さらに制作費の減少からトーク番組が重宝されていますが、芸能人のエピソードトークはすでに飽和状態。「似たような話ばかり」「もう飽きた」などとテレビ離れにつながる一因となりはじめていました。 

 その点、『激レアさん』のトークは聞いたことのないものであり、しかも嘘のないドキュメント。「芸能人よりも面白いエピソードを持つ一般人がたくさんいる」という再発見がありました。 

 また、「テレビ番組に出ているときの一般人は面白い」という感覚も『激レアさん』がもたらしたものの1つでしょう。テレビ番組に出演する一般人は緊張していたり、挙動不審だったり、あやしさを感じさせたりなどの芸能人にはないリアルな姿がエンタメ性につながっていました。 

 たとえばYouTube動画をアップする一般人は、芸能人のように明るく堂々と振る舞おうとしがちですが、同じ人がテレビ番組に出演したときは明らかに“よそ行き”のぎこちないムードで、それが新鮮で面白いのです。『激レアさん』はそんな一般人が面白いことを再確認させてくれる番組でした。 

局アナをメインに据えた適材適所 

 2つ目のポイントは、出演者の配置。『激レアさん』のレギュラー出演者は、オードリー・若林正恭さんと弘中綾香アナのみで、週替わりの芸能人ゲストを2人招いた上で、激レアさんを迎えてトークを進めていきます。 

 特筆すべきは、テレビ朝日にとっては自局アナの弘中綾香アナをメインに据えたこと。若林さんをMCではなく“裏回し”のポジションに配置し、あえて弘中さんをメインに据えたことに当初は業界内外から驚きの声があがっていました。 

 しかし、放送が進むたびに「絶妙な配置」「適材適所」という称賛の声があがるなど好評価が定着。「芸人MCの冠番組より企画重視で作ったほうが見やすい」「主役は一般人だから立場の近い弘中アナがイジるほうが角は立たない」などと、同番組は「バラエティのあり方や視聴者の見やすさを考えさせられる」という気づきをもたらしました。 

深夜から上り詰めた弘中綾香アナ 

 3つ目のポイントは、女性アナウンサーの可能性を広げたこと。 

 弘中アナは『ミュージックステーション』のサブMCを5年間にわたって務めた一方で、その他のゴールデン・プライム帯では時折『Qさま!!』のクイズ解答者として出演していた程度で露出はあまり多くありませんでした。 

 ただ、もともとテレビ朝日のアナウンサーは報道・情報番組中心の活動というイメージが強かっただけに、ほぼバラエティ一本の弘中アナは異質な存在として浸透。その親しみやすいキャラクターを決定付けたのが『激レアさん』での進行でした。 

 弘中アナは激レアさんたちに対して、謙虚ながらサバサバとした態度で進行。「番組の大半が弘中アナによるプレゼン」という構成・演出は深夜番組ながらインパクトがあり、2019年には「好きな女性アナウンサーランキング」で1位を獲得するほどの人気者となりました。 

 ちなみにその2019年はもう1つの代名詞的な番組である『あざとくて何が悪いの?』がスタートした年。弘中アナは以降2023年まで5年連続で同ランキング1位を獲得し、3人目の殿堂入りを果たしました。同ランキングの上位は高島彩さんや日本テレビ・水卜麻美アナのように朝昼の帯番組を担当するアナウンサーが多かっただけに、弘中アナの殿堂入りは“深夜番組発”の新たな可能性を感じさせるものだったのです。 

 もともと弘中アナは「あまりアナウンサー志向ではなかった」などの珍しいタイプ。『激レアさん』がきっかけとなり、『あざとくて』が加わったことで芸能人以上の人気と影響力を持つ女性アナウンサーになるというサクセスストーリーは後輩たちの可能性を広げるものでした。 

 最終回の放送中から終了後にかけてネット上にどんなコメントが飛び交うのか。テレビ朝日が思っているより多数の「ロス」があがるのかもしれません。 

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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