「二歩」で負けるなど、話題に事欠かなかった(時事通信)
事件前、交番に向かうが…
今回の被告の動機について、「AさんとBさんを殺害して、自らも自殺するのを目的とするものだ」と検察官は主張する。まずは事件当時の足取りなどを振り返る。
事件の前日、当時の居住地であった福岡県から京都府へ移動し、レンタカーを借りる。その後、ホームセンターで今回の凶器となるクワなどを購入。その日は車内で一晩を過ごした。
翌朝、コンビニで朝食を購入する様子と、付近の交番に向かうが引き返す様子などが、防犯カメラに映っていた。そしてその後、事件現場となるBさん宅に侵入する。Aさんは当時、父親であるBさんの家に住んでいた。
家のカーポートには橋本被告が遺留した紙袋が残されており、そこには衣服などの他に、ガスボンベ付きのトーチバーナー、長さ10cmほどのナタ、そして長く白いロープが入っていた。用途は明らかにされていない。
現場に残されていたクワは、全長609mm、刃体の長さ123mm×96mmで重さが524gの先端が鋭利なものであったという。このクワは現物が法廷に持ち込まれた。点々と赤黒い血のようなものがついており、休廷時間には現物が一般の裁判員の手元にも一時的にわたっている。
離婚や、それにともなう親権争いをきっかけとして一方的に恨みを持った末の事件だと当初思われていたが、この日午後に行われた警察官への証人尋問などから、単純ではない事件の全体像が徐々に見えてきた。殺人未遂現場に駆けつけた警察官が見たのは、仰向けに倒れる橋本被告と、その下に広がる大きな血だまりだったという──後編記事で詳報する。
(後編につづく)
◆取材・文/普通(裁判ライター)