人里に近づくクマが激増している(写真は別の地域で目撃されたクマ)
無惨に荒らされた遺体
「首と胴体が分離していて、胴体からやや離れた位置に頭部が転がっていた。頭部に関しては頭皮なども食われたと見られ、頭蓋骨が露出した状態だったようです。胸のあたりにも噛まれたような痕が認められている。さらに腹部には多くの爪痕があり、四肢も一部欠損するなど、損傷がかなり激しかったと聞いております。また、近くには男性のものと思われるかばんや帽子が散乱していたことから、ご本人とみてほぼ間違いないでしょう」
遺体発見時、そこにはまだ色濃く“獣の気配”が残っていた。
「当時、警察と家族が捜索にあたっていたのですが、『ウウー…』というクマの唸り声が聞こえたことに加え、木の葉っぱが揺れていたことから、一時現場から避難させています。13時頃に再度、消防や猟友会の協力も得て約40名体制でご遺体の回収に向かいまして、県の防災ヘリで無事にピックアップしている。週明けには司法解剖を実施して、個人の特定を進める方向です」
岩手県を含む本州で見られるツキノワグマは、北海道に生息するヒグマに比べて臆病だといわれる。しかし全国的にその目撃数や被害は激増。エサ不足や、人間に対する恐怖心の薄れを起因に人里に現れるクマを、近年では”アーバン・ベア”と呼ぶようになった。前出の佐々木氏も「尋常ではない状況です」と話す。
「日常的にあちこちで相当な件数、目撃情報がある。気温が下がった最近は特にひどく、毎日夕方になると10分に一度は『クマがいた』などの通報が入るような状況にまでなっています。交通事故よりも断然、クマの通報のほうが多い」
クマ被害があるたびに賛否の声が上がるのが、個体の駆除についてだ。
7月12日、北海道福島町で新聞配達中の男性がクマに襲われ死亡した際には〈クマがいる土地に人間が住んでいる〉といった苦情が数百件寄せられ話題となった。これに対してSNSやニュースのコメント欄では〈自分の街にきたらどうする気だ〉〈クマがいない所に住んでいる奴にはわからない〉など”駆除賛成派”の意見も相次ぎ、議論が巻き起こった。
佐々木氏はクマの危険性について「人間との距離がすごく近くなっている」と続ける。