頭部を引きちぎるほどの個体とは一体──
”特異な個体”の可能性も?
「基本的には臆病なので、人に会うとその場で逃げていくクマが多いんですが、中には人間の匂いも全く気にせず堂々と建物に近づく個体もいるんです。こちらとしても見た目などでは容易に判断できないため、非常に怖い。
私たちもライフルを持って(クマを)探せればいいのですが、それはできないので、当該のクマをどうするかは今後の行政の判断になってくる。警察としては住民に『人馴れしたクマ』に注意するよう、パトロールに加えて集中的に注意喚起を行ってまいります」
“人間馴れ”の果てに、人を殺めるほどに凶暴化したクマ──。男性が襲われた理由は定かではないが、よほど気が立っていたのだろう。同氏によると、傷の具合などから、少なくとも1メートルを越える親グマによる被害とみている関係者もいるようだ。
前述した、7月に北上市内で80代女性を手にかけたクマは体長1.3メートルほどだったとされるが、今回のクマはどんな個体と推測されるのか。市の農業振興課の担当者はこう語る。
「あくまで今回の件をクマによる被害と仮定して話しますが、”特異な個体”の可能性もあると思います。ツキノワグマは自分のエサ場と認めたところに人が入ってくると、ナーバスにはなりますが、本来は臆病な動物。1年で2人も襲われて亡くなっているのは異例です。
おととしには年間で485件の目撃情報があり、これが過去最高の水準だったのですが、今年はすでにそれを上回るペースです。こちらとしても入山を規制するといった対策は難しいので、注意喚起をしていくとともに、市民にも十分中止していただきたい」
最近では都市部でも目撃されるようになったクマ。「ツキノワグマは人を襲わない」という考えも、すでに過去のものになりつつあるのかもしれない──。