舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は初めての経験だらけでお芝居の楽しさをあらためて実感しているという稲垣吾郎さん(51才)。共演者からは「まったく変わらない」という声も上がっているという。放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、吾郎さんにインタビューした。
尊敬のまなざしで来られたりするとプレッシャーに
山田:7月から出演し続けてこられた舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』(東京・TBS赤坂ACTシアター)ですが、吾郎さんの出演回は残すところ10公演あまりとなりましたね。
稲垣:はい。ぼくにとって4か月近い公演やトリプルキャストというのは初めての経験でしたし、キャストの皆さんの組み合わせが毎回異なることで保たれる鮮度が眩しくておもしろくもあって、あらためてお芝居の楽しさを味わわせてもらいました。
実は先日、初めて(同じくハリー役の)平岡祐太くん(41才)の本番を見ることができたんです。これまでにも自分の舞台やコンサートを客席で見てみたいと思っていたんですが、普通それは叶わないじゃないですか。でも、『ハリー~』は吉沢悠くん(47才)や平岡くんの回を見られたことがすごくいい経験になりました。演じていて大変な箇所とか、長いせりふとかわかり合えているので、それらを共有したり、アドバイスをし合ったり、スタッフさんを通じて教えてもらったりと、そういうことでつながることができたことも楽しかったし有意義でした。
山田:9月初旬に拝見したのですが、「吾郎ちゃん、消えた!」とか、ものすごいスピードで別の場所にいるとか“魔法”がすごすぎてビックリすることばかりでした。
稲垣:皆さん、それは言ってくださいますね。ぼくも初めて見たときは本当に驚いたし、実は自分以外の人の“魔法”については、いまだにわからない部分もあります。
イリュージョン的なことはこれまでコンサートではやってきたけれど、それとも違うし。だから本番後も残ってキャストが入れ代わり立ち代わり“魔法”をかけ合っているんです。劇場もキャスト・スタッフもフル稼働で、まさに“カンパニー”でした。
山田:客席には作品のファンの皆さんも大勢いらしたし、修学旅行生がバスで見に来られてもいました。
稲垣:そう、それもこれまでのぼくの舞台とは景色が違いました。男性も多かったし、原作や映画を全シリーズ繰り返し読んだり見たりしているかたたちはバックボーンを知っているから、そのかたたちだけが声を上げたり、笑ったりしてくださるシーンがあるというのも発見でした。あとはもう、体力と精神勝負ですね。特に今回の舞台中はゴルフとかほかのことに打ち込むという気持ちにはなれないですね。友達とご飯に行ったり、好きなワインを飲んだり小さな気分転換はたまにしますけれど。
そんな中、映画『十三人の刺客』(2010年公開)で共演して以来、かわいがってもらっていた市村正親さん(76才)と1か月だけご一緒できたことはかけがえのない経験でしたね。あれだけ年齢を重ねられても身のこなしが軽やかで声もものすごく出ていらして、もちろん演技もすばらしくて、市村さんが出ていらっしゃるだけで一瞬にして空気が変わるのがすごすぎて……。舞台人のひとりとして市村さんとご一緒することは夢の夢だったので本当に幸せでした。
そんなぼくも最近は気がついたらいちばん年上だったという現場も少なくないんです。自分自身では何も変わっていないんですけれど、周りのかたからの見方や接し方がいつしか変わってきていて、丁寧語を使われたり、尊敬のまなざしで来られたりすると、ちょっとプレッシャーになっています。