タイトル「そしてあなたたちはいなくなった」を変えた訳

 第一部の終わりに「補章」として「アガサ・クリスティーと中島梓」という、短歌とは一見かかわりのなさそうな章が設けられている。

「私が評論を書くうえでいちばん影響を受けたのが中島梓で、何の話をしても中島梓の『小説道場』の話になってしまうというところもあるんですけど、女性同士の文学のコミュニケーションの場として『小説道場』はすごくうまい成立の仕方をしていたので、この章を入れました」

 巻末には、瀬戸さんが10首ずつ選んだ、本文に登場する歌人のアンソロジーを収めた。

 印象的でうつくしいタイトルは、葛原妙子の歌から。

 早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴らしき人生を得よ

「ウェブで連載していたときは、『そしてあなたたちはいなくなった』というクリスティーの『そして誰もいなくなった』をもじったタイトルでした。5年前ならそのまま受け入れられたと思いますが、今はマイナスイメージでとらえられるかもしれないと思い、変えました。『を』から始まる本のタイトルはなかなかないので、目立つところもいいんじゃないかと思います」

【プロフィール】
瀬戸夏子(せと・なつこ)/1985年石川県生まれ。歌人、批評家。著書に、歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』『かわいい海とかわいくない海 end.』、評論集『現実のクリストファー・ロビン 瀬戸夏子ノート2009-2017』『クリスマス・イヴの聖徳太子』、歌集ガイド『はつなつみずうみ分光器 after 2000 現代短歌クロニクル』など。

取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2025年11月6日号

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン