“テツ”は秋田犬の中でも希少価値が高いとされる「虎毛」という品種
「2人でドアを開けた瞬間でした。体高は1メートルはあったのではないでしょうか。テツより2回りくらい大きいクマがいるのが見えたんです。目があった瞬間にはもう、四つん這いで走りながら勢いよくこちらに突っ込んできました。ドアを開けてクマが来るまで1秒くらいでしょうか。とにかく急いで扉を閉めました。
ドアの向こうからクマが体重の圧をかけているのがわかって、これはさすがにヤバいと思いました。それで娘に、寝ている妻を起こして警察を呼ぶようにと言いました。それから5秒後ぐらいに、またテツがキャンキャンと外から鳴くのが聞こえたんです。そこで覚悟を決めました」
「大事な家族の一員であるテツをクマから守らなければ」
そう意を決して、高橋さんは外へ出た。
「心配で『テツ!』と呼んでみたら、すぐにテツがこっちに向かって走ってきた。血をダラダラと流しているのがわかりましたが、ひとまず生存を確認して安心しました」
しかしそこにいたのはテツだけではなかった。クマも横揺れしながら高橋さんに向かって突進してきたのだ。
愛犬を苦しめたクマを高橋さんはどのように追いやったのか。その話からは、クマの恐ろしさがヒシヒシと伝わってくるのだ──。
