11月22日にも舞台本番前にお参りへ
いまも墓参りを続ける理由
──今も築地本願寺に足を運んでらっしゃいますが、どんな想いからでしょうか。
「お墓があるならお参りに行きたいと思って、(弟子の)笑助くんに連絡したら、築地本願寺の納骨堂で眠っていると聞いて。もう普通の墓参りと同じなんですよ。
行って手を合わせるだけなんです。『噂の!東京マガジン』でこんな取材してとか、森本さんはまだ足の具合が良くないみたい。でもみんな元気だよ。僕も今度芝居やるけど、ちょっと見守っててよ、みたいな報告ですね。自分の体調を報告するときもあるし、仕事の話をするときもある。そんなに長くいるわけじゃないですよ。報告をして、また1カ月後に、みたいな感じです」
──なぜ、毎月月命日の22日に笑瓶さんのもとを訪ねるのでしょうか。
「友人のお参りに毎月行くのも初めてで、親父の墓は広島にあるんですけど、何年も行ってないような状況です。それでも笑瓶ちゃんが友達だと気づいてからは行くことでちょっと自分が安心することもあるんです。自己満足なんですけどね。
人って亡くなるとどうしたってどんどん記憶から遠ざかって薄れていくもんじゃないですか。だけど月1回、笑瓶ちゃんに会いに行くっていうのが、感情で言うと嬉しさとはまた違う、懐かしさでもない。もう何も考えず当たり前みたいな感じなんです」
──この2年半、悪天候やお仕事でスケジュールが合わない日もあったと思いますが。
「22日はもう自分の中では築地に行くのが当たり前みたいになって、毎月カレンダーをめくって、22日に仕事があるんだったら前の日に行こうかとか、予定を立てるくらい日常になっています。
多分、自分の性格上、やり始めたら続けたいっていうのがあって、ある程度続けないと気が済まないようなところもあるし、それと一緒にしたら失礼なんだけど一回途絶えたら翌月に行くかなとか。そういう自分の中の性格への不安もあるんで、行くと決めたんだったら行こうと思っていて。それが別に暑くても寒くても雨が降っていても止めるかというのはないですね」
ときには笑顔で、ときには唇を噛みしめながら笑瓶さんとの思い出を振り返る山口さん。今回の取材の唯一の条件は「笑瓶ちゃんのことでギャラは受け取れない」ことだった。友を思う山口さんの想いは天国の笑瓶さんに届いているにちがいない。
文/千島絵里香(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫
