高市早苗首相(時事通信フォト)
自らの「台湾有事」発言で中国との間で亀裂が深まる高市早苗・首相は身動きが取れなくなっていると報じられている。発言のインパクトはもちろん、官僚不信の高市氏に、親身に相談相手になる側近がいるのかを懸念する向きもある。そういった高市氏と官僚の距離感が話題になると、時折語られるのは、6年前の「ある過去」のエピソードだ。
発端となる「存立危機事態にあたる可能性が高い」という発言は11月7日の衆院予算委員会で飛び出した。高市氏独特のスタイルに原因があるという見方は強い。官僚による長時間のレクを嫌い、代わりに執務室にこもって答弁資料を読み込んで、疑問点がある時だけ、秘書官を通じて省庁に問い合わせる。そこには根底に官僚への不信感も滲む。
仮に答弁レクをやっていたら、存立危機事態となる想定を改めて説明する官僚は、「ただ総理、これは歴代内閣とも言及していませんけれどね」と補足したに違いない。高市流の情報インプットのスタイルは大臣時代から観察されてきたが、その欠点を含め諫めてくれる腹心がどれだけいるのか、が気になってくる。
筆頭秘書官に就いた飯田祐二氏(88年通産省入省)は前経済産業事務次官だが、もともと高市氏と人間関係があった人物ではない。第1次、第2次の安倍政権で首相秘書官を務めた今井尚哉氏の推薦だったと言われる。当初、高市氏は今井氏に秘書官就任を乞うたとも言われるが、今井氏はこれを固辞して内閣官房参与におさまっている。
同じ経産省から、首相秘書官に就いた香山弘文氏(1995年通産省入省)は経済安保の専門家だが、やはり高市氏との従前からの濃密な関係は見いだせない。
高市氏側からのラブコールで官邸入りした経産官僚といえば、小泉政権で高市氏が経済産業副大臣を務めた際に仕えた茂木正(1992年通産省入省)がいる。ただ、先に経産省からは後輩にあたる香山の秘書官就任が内定していたため、高市氏の希望をかなえるべく茂木氏は、官房長官の秘書官として官邸入りした。
