仏門に入ったのは、先祖供養でたびたび耳にするお経が気になって仕方がなかったからという

仏門に入ったのは、先祖供養でたびたび耳にするお経が気になって仕方がなかったからという

 ソープ嬢として3~4年ほど働きましたが、そこで得心したのは、この世は性に翻弄される人ばかりだということです。どんな成功者でも、全裸になればやることは同じ。性欲は食欲、睡眠欲と並ぶ「3大欲求」といわれますが、なかでも衝動が最も強く、満たされることがない。繁殖期のない人間ならではの強い欲求です。

 ソープ嬢時代には僧侶がお客さんとして来たこともあります。性欲は理性ごときでは太刀打ちできない。そう痛感したものです。

 社会的なストレスや孤独、自己否定感などさまざまなものがひとまとめになって性欲になっている。この性欲に打ち克つためには、むしろ誘惑に勝てるくらいに性を満たし尽くしておく必要があるのではないか、そんなこともぼんやり考えていました。

 ソープ嬢をやめた後、会社勤めを経ていまの夫と結婚し、子宝にも恵まれました。そんな幸せを手に入れた私が仏門に入ったのは、先祖供養でたびたび耳にするお経が気になって仕方がなかったからです。それが先ほど触れた理趣経でした。

 正式には「大楽金剛不空真実三摩耶経」といい、「男女の性愛は清浄で菩薩の境地と同じである」とする経典です。幼い頃から「人生とは何か」を考え続けてきた私は、その教えに衝撃を受けました。そして縁あって真言宗の師匠と出会い、出家を決意した次第です。

善悪を超えた自然の感情

 なぜ性愛が清浄なのでしょう。それは人の情欲が分別や善悪を超えた、自然の感情だからです。つくられたものではない「物事本来の姿」は清浄なもの。逆にいえば、性的な興味がなくなるのは「不自然」ということになります。

 性欲が自分の活力につながっていることは、多くの方が体感しているのではないでしょうか。性欲の衰えは生命力の衰えにつながり、枯れると死に向かっていくイメージがあります。実際に、高齢でも性欲が旺盛な人は、病気で入院しても回復して家に帰ってくるという話をよく耳にします。

 私自身、半年ほど禁欲生活を送ってみたことがありますが、体に尿漏れなどの異変が起きました。締まりも悪くなり、禁欲は体にとっても自然な状態ではないことを自覚しました。以来、定期的に自慰行為をしています。

 生きるうえでは何事も「やりきる」ことが大切で、そこから新たな境地が生まれます。性愛においても、我慢して不完全燃焼のまま終えるのではなく、「もう身を埋めきったから悔いはない」という次元まで行ってみる。そうすることで、さらなる精神性の高みに目が向くようになるのではないでしょうか。

 理趣経の秘儀「五秘密」では、清浄のシンポルともいえる金剛薩たを中心に、欲、触、愛、慢の四菩薩が表わされます。死ぬまでセックスを求めることは、無我の境地、悟りに近づく道ともいえるのです。

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