ホリーさんの遺体はバラバラに切断され川に遺棄されていた(Lincolnshire PoliceのSNSより)
ニコラスの異常性が決定的に明らかになったのは、ホリーさんが飼うペットに対する動物虐待だった。ホリーさんの母親は、「ホリーは滅多に帰省しなかったが、ある日、悲嘆に暮れた様子で帰ってきて、泣きながら『夫が子犬を殺した』と話し始めた」と証言している。
その内容は凄惨を極めていた。ホリーさんがシャワーを浴びている間に、ニコラスは子犬を洗濯機に入れて作動させたという。異変に気づいたホリーさんは洗濯機を壊して犬を引きずり出したが、ニコラスは再び子犬を奪い取り、溺死させたとされる。
「この子犬の一件以外にも、子猫3匹をキッチンで溺死させたり、飼っていたハムスターをフードミキサーや電子レンジに入れて殺すなど、残虐極まりない行為を繰り返していたことが報じられています」(国際ジャーナリスト)
ホリーさんはこうした行為を警察に通報していたが、ニコラスはホリーさんに対して「自分が殺したと言え」と命令していたとされる。家族の不安は日増しに高まっていったが、母親は当時の娘の様子を「自分が愛した男が邪悪な怪物だと信じたくなかったのだと思う」と振り返っている。
そして動物に向けられていた残虐性は、ついにホリーさん自身に向けられた。捜査当局がニコラスの携帯電話を解析したところ、「死体を処分する方法」「妻が亡くなった場合に受け取れる給付金」「神は殺人を許すか」といった内容を、事件前にインターネットで検索していたことが判明した。
事件後に母親は、警察が過去に動物虐待を行った個人の記録開示を可能にする「ホリーの法」の制定を求める嘆願活動を支援しており、今年12月現在で、すでに5万人以上の署名が集まっているようだ。
「ペットへの虐待がエスカレートして、人間への犯行に繋がるケースがあることは日本人もよく知っていると思います。また、RSPCA(英国動物虐待防止協会)によると、多くのドメスティックバイオレンスの加害者が、被害者を支配したり、罰を与えたりする手段として、動物虐待を利用していることもわかっています。ホリーさんのケースでも、ペット虐待死には洗脳の手段としての意味合いもあったように思います」(前出・国際ジャーナリスト)
動物虐待の兆候が事前に共有されていれば、ホリーさんの死を防げたかもしれない。「ホリーの法」は英国民が軽視してきた社会の隙を、いまも静かに問い続けている。
国際ジャーナリスト/久遠マリウス・レンジ
