竹田津実氏
「箱罠は怨念を生む」
竹田津:ひとつ気になるのは今、(クマ駆除のために)箱罠をばんばん仕掛けてるでしょう。あれは怨念を生むんですよ。というのも、親子の別れ、兄弟の別れを経験させるじゃないですか。親が捕らえられた場合は子ども、子どもだけが入った場合は親、残されたほうは絶対、忘れませんよ。鉄砲で撃たれるところも、どこかに潜んで見ている。子どもなんかはね、見えないところから、ものすごい大きな声で吠えたりするらしいですよ。
──あるハンターがクマに襲われたとき、昔、親グマを撃ったときに逃してしまった子グマが復讐に来たんだという話をしたら、周りの人は、笑って本気にしなかったそうです。でも、やはりクマ猟をしている人は「俺は、その感覚はわかる」って言ってたんですよ。信じられる、って。
竹田津 それくらい学習能力の高い動物なんですよ。
──クマが“人は思ったほど怖くない”ということを学習してしまった以上、昔のように滅多なことでは人前に現れないようにするには5年、10年、あるいは20年くらいかかりそうな気もします。
竹田津 今、老人は攻撃対象のひとつになっているんだと思いますよ。だってね、強いやつに攻撃なんて仕掛けないでしょ? その行動パターンは、クマの間ですでに共有されつつあるんじゃないかな。だから、お年寄りは野外に出るときは、特に注意した方がいい。クマに人の恐ろしさを学習させなきゃいけないみたいな言い方をしますよね。勉強しなきゃいけないのは、クマだけじゃない。同時に人間も学習するべきですよ。いい機会だと捉えてね、5か年計画くらいで野生との付き合い方を勉強しなおした方がいいですよ。
(了。前編から読む)
■取材・文/中村計(ノンフィクションライター)
