クマ側からの視点で自然を見ると…(時事通信フォト)
クマによる人身事故が相次いだ2025年。「駆除」を求める声がSNSなどを中心に大きくなるなかで、北海道・ロシアでヒグマを撮影してきた経歴を持つ動物写真家・獣医の竹田津実氏(88)は「駆除一辺倒」の世論に警鐘を鳴らす一人だ。同氏は、マスコミや一般市民にもクマの生態についての理解が足りていないと指摘する。その真意を、ノンフィクションライターの中村計氏が尋ねた。【前後編の後編。前編から読む】
──少し前までは動物愛護の観点からクマは駆除すべきという意見は言いづらい雰囲気がありました。でも今は逆ですね。無闇に殺すべきではないという意見のほうが言いにくい。
竹田津:あんたもマスコミの一員だけど、マスコミにも責任はありますよ。騒ぐわりには、冗談でしょ? っていうぐらいクマのことを何もわかっていない。数字が取れるものだから、おもしろおかしく報道してるだけ。
──すぐに「人喰いグマ」というワードを使いたがるんですよね。多くのクマ関連の記事は読者を怖がらせるエンターテインメントのような仕立てになっています。付き合い方さえ間違えなければほとんどのクマはそんなに怖いものじゃない、みたいなことすら言えない雰囲気があります。
竹田津:本当に滅多に襲わないよ。ヒグマは。ツキノワグマのことは、私はあんまりよくわからないんだけど。特に知床のヒグマはその傾向が強い。そんなに危ない動物だったら、僕なんか、とっくに酷い目に遭ってるはずでしょ? そんなこと、一度もないんだから。もちろん、気をつけて行動していますけどね。
──2025年8月、羅臼岳で登山者がクマと接触し、亡くなりました。北海道が記録を公表し始めた1962年以降、知床で観光客がクマによる事故で亡くなったのは初めてのことでした。あのニュースを聞いたときは、どのように思われましたか。
竹田津:言葉は悪いけど、よっぽど運が悪かったんだろうなと思ったね。ただ、驚きはしなかったよ。クマがたくさんいるところに、人間が入っていってるんだから。あの事故は市街地に出てきたクマに襲われるニュースと一緒にしたらだめだと思いますよ。クマの住処に人間がお邪魔している以上、クマを責めるのはかわいそうな気がするな。クマの味方をしたら、袋叩きにあうようなご時世だけど、僕は老人だし、叩かれても、たいしたことじゃない。もう、あらゆるガンにかかったしね。
