スポーツ

「春の天皇賞は牝馬不毛」データの裏 カレンブーケドールは大丈夫か

阪神競馬場のパドック

今年は阪神競馬場で行なわれる

 牝馬だから割り引き、そんな空気はないどころか積極的に買い、がセオリーともなりそうなのが昨今である。競馬ライターの東田和美氏が分析した。

 * * *
 昨年は古馬の牡牝混合の芝GⅠ10戦のうち9戦で牝馬が勝ったが、天皇賞(春)だけはフィエールマンが連覇して牡馬の面目を保った。なにしろこのレースで牝馬が最後に勝ったのは1953年。グレード制が導入されてから23頭が出走して6着が最高だという。究極のスタミナを要求される3200mでは、キレで勝負する牝馬は圧倒的に分が悪いということなのか。

 ところで牡牝混合の芝GⅠで牝馬が圧倒的に強かったのは実は昨年だけ。2019年は3勝、2018年はJCのアーモンドアイのみ、2017年はゼロだ。昨年たまたま強い牝馬が全盛期を迎えていたということなのか。

 そもそも牝馬は、GⅠに限らず重賞レースで好走するようならば引退後の繁殖入りは確実。牧場に戻っても大事にされ、優秀な牡馬と交配されることがほぼ約束されるし、生まれてきた子も牡牝かかわらず高値が付くし、デビュー時には話題にもなる。ここでジェンダー論を持ち出すつもりはないが、競走人生の先に見えるものが違うのは明らか。牝馬は傷がつかないうちに「いいお嫁さん」になることが幸せだという考え方だ。

 平成に入っても1997年にエアグルーヴが天皇賞(秋)を勝つまで、牝馬が勝ったGⅠはすべてマイル以下だった。花嫁道具として強力なのは、男勝りの勝負強さやスタミナではなく、スピードや一瞬のキレだった。

 しかし、素質を見せたら引退して嫁入り、それでいいのだろうか、という機運が出てきたのが四半世紀ほど前から。古馬牝馬の競走生活がもう少し長くてもいいのではないか、賞金が世界一と言われて久しい日本競馬、とくに1億に達するGⅠで勝って稼ぎたい。このころから数を増やしてきたクラブ会員が良血馬に出資しようとすると、牝馬にしか手が出ないことも多いので、オープン入り後にさっさと引退されては、まったくうまみがない――1996年、それまで4歳(現3歳)限定だったエリザベス女王杯が古馬にも開放され、10年後の2006年には春のGⅠヴィクトリアマイルが創設された。

 これにより、実績を積んできた古牝馬は、春ヴィクトリアマイル、秋エリザベス女王杯という目標ができた。「牝馬路線の充実」を掲げた番組編成にはサークル内からも歓迎の声が上がった。

 でも、これって、人間でいえば、既得権益を守りたい男たちが、女同士の闘いの場を設けたっていう印象。エリザベスとヴィクトリアでいいだろう、他は男に任せておけばいいというように感じられたというのは、うがった見方だろうか。

 天皇賞(春)に直結する前哨戦としてはまず3000mの阪神大賞典で、平成以降では12勝2着9回3着15回とダントツ。このレースでは牝馬の優勝が1度もないが、出走馬も少なく、ここ10年ではわずかに4頭。そのなかで2015年に5歳牝馬デニムアンドルビーが2着に入っている。

 次が大阪杯組で7勝2着4回3着4回。今年は大阪杯からの出走はないが、過去10年で牝馬の出走は12頭。それで3勝もしている。GⅠになったことで、天皇賞の前哨戦という意味合いは薄まり、香港QEⅡ世Cや宝塚記念へ向かうことも多くなった。2015年のラキシスや、昨年の1、2着牝馬も次走は宝塚記念だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン