国内

検察による東電捜査 人災がからむ原発事故は“事件”と認識

 福島第一原発事故は、日本だけではなく世界に不安の影を投げかけている。東京電力への批判は多く、また、今後の賠償問題や経営問題など課題は山積しているが、その東電に捜査当局の手が伸びようとしているという。

 検察が東京電力経営陣の責任追及に向けて資料収集を開始しているのだ。検察の動向に詳しいジャーナリストの伊藤博敏氏が報告する。

 * * *
「原発事故を天災と人災に切り分け、そのうえで、東京電力の誰にどんな責任が生じるかを検証している」

 検察関係者は、将来の事件化に備えて、検証作業を行なっていることを隠さない。天災だけなら事故、人災が絡めば事件となる。その可能性があって公的資金が投入され、告訴告発も相次ぐだろうから、検察が、今後、「事件対応」するのは当然だ。では、天災と人災の線引きはどこか。

 簡単に言えば、津波までが天災、津波後が人災となる。

 現行の原子力規制は、首相が任命する原子力安全委員会が原発の安全審査や政府への助言を行ない、経済産業省の外局である原子力安全・保安院が、原子力施設に検査官を配置、原発を監視することになっている。

 従って、東電がマグニチュード9で津波の高さが15mという天災を予測して設計、運用していたわけではなく、チェック機関もそこまでの想定を求めなかったのだから、「天災だった」という言い訳は成り立つ。

 しかし、津波後はどうだろうか。

 震災が発生した3月11日、東電の勝俣恒久会長は北京にいて、清水正孝社長は関西にいた。トップ2人が不在の中、危機は次々に訪れ、原子炉内の気圧が急上昇、格納容器破損の恐れが出てきたため、同日午後11時過ぎには菅直人首相や海江田万里経産相、斑目春樹原子力安全委員長らの間で、弁を操作して高温の水蒸気を外部に逃がす「ベント」と呼ばれる作業が必要になったという合意がなされ、何度も指示が出されたものの、東電は動かなかった。

 結局、ベントの開始は翌日の午前10時過ぎで、その5時間後には爆発が起きたことを思えば、初動の遅れが致命的だった。

 東電関係者が率直に言う。

「弁を開けると大量に放射性物質が拡散する。そのことへの恐れがあった」

 また、廃炉になるのをためらって、海水の注入が遅れ、それが炉心溶融につながった、とされる点も同じである。そうした経営陣の保身が、大惨事につながったことが実証されれば、業務上過失致死傷罪などが成立する。

 主任検事が証拠品を改竄するなどした大阪地検事件をきっかけに、再生が求められている検察は、自らの存亡をかけて天災と人災の狭間を縫う捜査を行なうことになる。

※SAPIO2011年5月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
ジャンボな夢を叶えた西郷真央(時事通信フォト)
【米メジャー大会制覇】女子ゴルフ・西郷真央“イップス”に苦しんだ絶不調期を救った「師匠・ジャンボ尾崎の言葉」
週刊ポスト
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン