国内

原発執着の菅氏 市民運動家ゆえに大枠でもの見えずと櫻井氏

 震災から2か月以上が経過しても明確な復興計画を打ち出せず、原発の事故対応も右往左往。この国の指揮官であるはずの菅直人首相の体たらくは、国民を呆れ果てさせた。『ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、菅氏の「情けないリーダーシップ」を批判する。

 * * *
 大震災発生から1か月の間に、菅氏は20以上もの会議を乱立させました。ダメな会社ほど会議が多いと言いますが、その典型です。官僚からは「会議では各省が状況を話すだけで終わり。報告ばかりで、誰も責任は取らない」という声があがっています。

 ようやく、菅氏は乱立した組織を見直すと言い始めましたが、今の状況を見ると、彼の頭の中にはあたかも原発問題しかないかのようです。それが、この国の未来を危ういものにしていることに、氏は気付いていません。

 大震災は間違いなく「国難」であり、これをどう乗り越えるかが問われていますが、他にも日本の将来を左右する大きな問題が目の前に数多くあるのです。
 
 例えば6月までに決めるとしていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を、日本は先送りにしました。このことは、日本抜きでどんどんTPPの制度づくりが進められてしまうことを意味します。本来なら日本も積極的にTPPの協議に参加し、壊滅的な打撃を受けた農業をいかに国際競争力のある産業に育て直していくかという発想で取り組むべきです。

 また、日本が国難にある今こそ同盟国である米国との連携が重要であるにもかかわらず、ゴールデンウィークに予定していた「2+2」(日米安全保障協議委員会)の協議を先延ばしにしました。

 菅氏は自分は「原発に詳しい」と思い込んで、この大災害の最中、原発について勉強しているようですが、呆れてしまいます。国の先頭に立つリーダーとして大きな視点で国づくり、復興への道筋を考えれば、もっとやるべきことがあるはずです。

 にもかかわらず菅氏がそうしないのは、結局、彼は市民運動家であり、大きな枠組みで物事を見ることができない、つまり「国家観」がないからです。
 
 前原誠司氏、枝野幸男氏、鳩山由紀夫氏……菅氏以外の民主党の面々を見渡してみても、残念ながら、国を牽引するリーダーとしてふさわしい人物は見当たりません。
 
「菅降ろし」に対して、菅氏を擁護する立場の人も、「今、もし解散されたら自分たちが落選する」と思って続投を許してきたのではないかとさえ疑ってしまいます。嘆かわしいばかりです。

 この国難は、日本が力強い国に生まれ変わる機会にもなりえます。それを実現できる真のリーダーの登場を望まずにはいられません。

※SAPIO2011年5月25日号

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン