国内

脱原発宣言の経営者 「経営者が脱原発を言えない理由はお金」

 東日本大震災の直後から、企業として「脱原発」を掲げ、大きな話題になっている金融機関がある。城南信用金庫─。東京都と神奈川県で計85店舗を展開する同信金は、4月8日にいち早くHPで「原発に頼らない安全な社会へ」というメッセージを発信。その後、吉原毅・理事長が脱原発を宣言したインタビュー映像が動画投稿サイト「YouTube」にアップされると大きな反響を呼び、再生回数は7万回を超えた。同社は具体的に、どのような取り組みを進め、それはどういった想いに基づいた行動なのか、吉原理事長に改めて問うた。

 * * *
――一般的には保守的な業界とされている金融機関のトップとして、「脱原発」を公言したことが話題となりました。

吉原:YouTubeの動画を自分で見ていて思ったのですが、私はごく当たり前の話しかしていないはずです。震災が起きて、これまで原発に対する問題意識が低かったことを反省し、これから何か自分にできることはないか考えるごく普通の感覚です。では、なぜ動画が話題になったのか。それは、私が企業経営者として言ったからだと思うんです。ソフトバンクの孫正義社長は例外ですが、大企業になればなるほど経営者は公の場で「脱原発」とは言いません。

――なぜそうなるのでしょう。

吉原:結局、「お金」が絡む話だからだと思います。電力会社の利益になり、電力の供給を受ける全ての会社の利益にもつながる。本来、原発というものを国策で進めるならば、立地する地域の安全、国が抱えるリスクを考えて、慎重かつ安全に進めなければなりません。ところが、これまでにもしょっちゅうトラブルを起こしてきたにもかかわらず、その原因が究明されてこなかった。目の前の利益を優先する思考が蔓延している。そこから脱却できないから企業経営者は「脱原発」と言えないのです。

――正論ですが、城南信金も原発の恩恵を享受してきたはずです。

吉原:ですから、自分たちができることから地道に始めようと考えました。まず、原発への依存の割合が3~4割ならば、それを我慢して節電してみようと。空調や照明を中心に節電に取り組んだところ、本店の電力消費量は前年比3割減となりました。LED照明への切り替えやソーラーパネルの設置も進めたいと考えています。多少の不便はありますが、やればできる。社会全体で取り組むようになれば、もっと大きな変化になるのではないかと考え、お客様の省エネルギーへの取り組みをお手伝いできるようなキャンペーンを行なうことにしました。

――5月2日に3つの商品を発表しています。

吉原:はい。ソーラーパネルや蓄電池などの設備投資を奨励するための「節電プレミアムローン」、自己資金でそうした設備投資をした方向けの優遇金利の「節電プレミアム預金」、そして家庭で電気使用量を3割削減した方への「信ちゃん福袋サービス」の3つになります。3割節電できれば、原発に頼らない安心できる社会が実現できるかもしれない、というソフトなメッセージですが、そういうことを訴えていくための商品、サービスとして3つ出しました。

 いずれも融資部や業務部、企画部からあがってきたアイディアです。最終的な判断は私がしましたが、当金庫の中でも通常業務の中で原発の問題を考えるという意識が高まっていると思います。

■聞き手/ジャーナリスト 小泉深

※SAPIO 2011年7月20日号


関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン