国際情報

中国メディア 日本の首相交代劇は人々に嘲笑と教訓もたらす


民主党代表選は野田佳彦財務相が海江田万里氏を逆転する「ドラマ」で幕を閉じ、野田首相が誕生する。この政治劇を、お隣の「政治大国」中国はどうみているのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

* * *

日本では中国の高速鉄道事故が大きな話題となり、多くの日本人がこのニュースに溜飲を下げたようだ。一方、隣の中国から見ると小粒な首相がころころ入れ替わる日本政治の迷走ぶりが何とも面白いらしい。

民主党の代表選を控えた8月27日、人民日報系の国際情報紙『環球時報』は、この話題を社説で取り上げた。タイトルは何と、〈(日本の)首相交代の連続ドラマは、人々に嘲笑と教訓をもたらす〉だ。

外交問題に慎重で言葉を選ぶメディアが多い中国にあって、この『環球時報』が一味違うのは、本音を伝えることで読者の圧倒的支持を得ているからだ。外国にはことさら厳しく、なかでも日本への論調はシビアであることから、日本の北京特派員の間で「中国の『産経新聞』」と呼ばれる日刊紙だ。

つまり、機関紙にあっても世論の本音を反映するメディアであり、中国が日本の政界をどう見ているのか、ぶっちゃけたところが分かるというわけだ。

では、その『環球時報』の社説は今回の首相交代をどう分析しているのか。

まず、冒頭で〈日本の首相交代連続ドラマの最新シリーズが昨晩また幕を開け、菅直人首相は短命首相の列に加わった。日本はアジアで最も成熟した民主主義制度を確立した国と見られていたが、長い停滞期によって日本社会を焦燥が覆ってしまい、いまや処方の迷走を通り越して破れかぶれといった有様だ。

(中略)日本はまるでシャツを着替えるように7年で6人の首相を取り替えてきたが、ギネス記録にでも挑戦するつもりなのだろうか〉と皮肉ってみせる。

その上で日本の現状をこう分析する。

〈日本の政治は決断力を喪失し、危機を突破するために力を凝縮することさえできないようだ。それでいて首相を交代することにしか希望を見出せず、相変わらず同じ場所で悶々としている。すべての国家にとって希望による社会の鼓舞は必要だ。しかし、その希望を首相交代にだけ託し、責任のすべてをなすりつけるのでは、それこそ“希望バブル”と言う他ない〉

〈日本の政治は派閥が林立し、党より派閥が重視される傾向があり、政界の世襲による壟断も深刻だ。世界の政治環境は大きく変わり、日本経済の相対的に位置も移り、日本に二大政党制が生まれ、社会に焦燥感が広がっても、派閥間の小さな争いに終始する姿は相変わらずだ。誰もそれを変える力もない〉

〈2009年に民主党が政権に就き、日本の政治に新しい政治改革の時代が訪れたかのようであった。しかし、この希望のバブルもあっという間に弾けてしまった。民主党は早速に自民党から首相交代という連続ドラマを引き継ぎ、あたかも自民党の別働隊のようになってしまったからだ〉

では、『環球時報』は、こうした苦境下の日本がどうすべきだといっているのか。

〈日本民族は心から変革する必要があるだろう。国家の能力をきちんと評価し直し、世界の中の自分の立ち位置を探ることだ。中国の台頭を心から受入れ、それを行動に移すべきだ。そして(中国に対抗することではなく)自分の得意分野を伸ばしていくことを考えるべきなのだ〉

〈それぞれの国にはそれぞれの短所と長所がある。日本はこれまで多くの点でアジアの模範であった。しかし、いまの日本の窮状は、われわれ新興国に「国が一旦決断力を失ったらどんなことになるのか」を示してくれている。民主はその欠陥を含め日本で十分な花を咲かせた。近代以来、日本はずっと中国が世界を見るための「最も近い窓」であり続けた。そしていまも世界を知る教科書として熟読に値する存在だ〉

外国メディアにこんな風に書かれるのも困ったものだが、反論したいという欲求が湧いてこないのも、また一面の真理か。


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