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織田信長だったら朝鮮出兵は成功させていたと落合信彦氏指摘

 この20年で、実に14人目。またも総理大臣が代わった。日本という国には、器の小さいリーダーしか生まれないのか。だが、国際ジャーナリストの落合信彦氏は、そんなことはないと信じている。それは歴史を紐解き、学んでいけばわかることだという。落合氏は織田信長を例に日本にもリーダーはいたと説く。

 * * *
 原子力発電所を巡る騒動は、首相が代わっても収まりそうにない。事故が起きてもいない原発まで次々に止めようとした前任の菅は問題外だが、新首相の野田も反原発の連中の声に手を焼くことになるだろう。

 これは日本人の悪い習性で、「羮に懲りて膾を吹く」という考え方だ。一度痛い目を見たら、もう二度と手を出したくないと拒否反応を示してしまう。もちろん、今回の福島の事故で原子力発電に多くの困難が伴うことが改めて示された。

 しかし、エネルギー問題を大局から考える視点が欠けている日本人が多すぎる。中東情勢が不安定なままの状態で、仮に火力発電に軸足を戻せば、どれだけのコストがかかるか、全くわかっていない。

 歴史を振り返れば、英雄に共通している特性は、大局を見据えた判断のできる頭の良さと、怯むことのない大胆さだ。

 信長配下の水軍は1576年の第1次木津川口の戦いで、毛利水軍の火矢による攻撃に屈し、惨敗を喫した。陸では破竹の勢いであった信長が、海上では逆に壊滅的な打撃を受けたのだ。しかし、一度失敗があったからといって諦めるというような判断を、信長はしない。

 この水域は、当時信長軍が攻略を目指していた石山本願寺への、敵方の補給路だった。ここで制海権を奪えなければ、全体の戦略に問題が生じることを信長は誰よりもよくわかっていた。

 信長は、伊勢の大名・九鬼嘉隆に命じて、史上初めての鉄甲船を建造させる。毛利水軍の火矢も、鉄板で覆われた船には効かない。こうして2年後の第2次木津川口の戦いでは、毛利水軍を撃破。大坂湾の制海権を信長は奪取。本願寺の攻略にも成功することとなる。

 恐れおののいてリスクを取らないだけでは、進路は開けない。大胆に進み、かつ独創的なアイディアで突破口を開くところに、信長の強さはある。

 また、鉄で船を覆うというアイディアも、ヨーロッパの戦争の歴史で登場するより早く信長が考えつき、実現させたものだった。そんな世界最高レヴェルの能力を持つ信長が、1582年に48歳の若さで命を落としていなかったら、日本の歴史は全く違ったものになっていたかもしれない。

 信長の死から18年後の1600年、関ヶ原の戦いで徳川家康率いる東軍が勝利し、その後の徳川幕府治世下では「鎖国」が進められた。対照的に、同じ年にイギリスは東インド会社を設立。七つの海の制覇に向けて、大英帝国が立ち上がったのだ。

 もし17世紀を迎える時、日本のリーダーが信長だったら……。

 信長が、中国大陸への進出を計画していたことは多くの史料に残されている。晩年の秀吉の朝鮮出兵はひどい失敗に終わったが、信長であれば成功を収めていたかもしれない。

 世界が帝国主義に傾いていく時代に、日本も肩を並べて足を踏み入れていったのかもしれない。少なくとも、海外との接触に対し堅く扉を閉ざして、亀の甲羅に引きこもるような時代が270年も続くことはなかっただろう。

 欧米では1600~1700年代にかけて市民革命が相次いで起きた。日本でそれに近い明治維新(1868年)が起きる100年以上も前のことである。欧州の100 年先を進んでいた信長が死に、逆に100年の後れを取った。

「内向き志向」と揶揄される今の日本人の姿勢の遠因が、本能寺にあったのかもしれない。私には、そう思えてならない。

※SAPIO2011年10月5日号


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