国際情報

ロシアで日本へ4島返還し「法と正義」の国になろうの主張出る

ロシアは日本に対し、ロシア軍機が日本の領空に何度も接近するなど度重なる挑発を仕掛けてきている。その裏にどんな意図があるのか。日本はどう対処すればいいのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。

* * *
3月11日の東日本大震災の後、ロシアの情報収集機が日本の領空への接近を繰り返しました。8月末から9月中旬にかけて極東で大規模な軍事演習を行ない、9月8日にはロシアの戦闘機が日本を1周する形で飛行。その2日後には北方領土沖の日本領空に10回も接近し、ともに自衛隊機がスクランブル(緊急発進)しました。

これらのロシアの動きは日本に対する露骨な圧力です。日本がどこまで対応できるか、試していると見てよいのであり、厳正に対処すべきです。

同時に一連の軍事演習は中国へのデモンストレーションで、軍事的牽制と見ることもできます。

対中牽制という視点に立てば、ロシアとインドの関係が大きな意味を持ちます。インド洋で“真珠の首飾り”と呼ばれるインド封じ込め体制を中国が構築し、陸上では中印国境線から深くインド側に入った地域までも中国が領有権を主張しているために、強い警戒心を抱いています。

インドとロシアの波長は中国という点でも一致します。インドが米国との関係を急速に強めているのは周知の通りです。インドは日米、オーストラリアとの連携にロシアも加えたいと考えています。そこに東南アジア、韓国が加われば、地政学的に見れば、中国封じ込め体制が生まれます。

インドの戦略家たちは大きな視点で見れば、日本がロシアと緊密な関係になることは、対中牽制で非常によい戦略だと言います。中国を封じ込め、ロシアから安定して天然ガスを得られればエネルギー安保上もメリットがあるのではないかという指摘もあります。

しかし日露間には北方領土問題があります。ロシア側が、国際法に反する不法占拠状態を解き、北方4島を返還することなしには、日露関係が大きく前進することはあり得ません。

プーチン氏らの北方領土に関する立場は強硬ですが、ロシア国内には4島の占拠が国際法に違反してなされたものだと認識して、ロシアが真に「法と正義」の国であろうとするなら、日本に返還するのが最善の方法だと発言する専門家もいます。

日本はそのようなロシアの良心的な声をより広い範囲に広げる努力をすると同時に、北方領土問題の解決は、あくまでも入り口であって出口ではないことを心に刻んでおかなければなりません。

北方領土問題を解決した上で、「中国抑止」という大戦略で合意できれば、それは両国にとって多くの可能性が生まれることを意味します。ロシア人の対日感情は非常によいのです。

繰り返しになりますが、領土問題の解決は容易ではありません。そのことをよく承知して、それでも北方領土返還を粘り強く主張しながら、その先に大戦略を描くのです。大戦略は日露双方がともに得をする道を具体的に描くことが大事です。焦らずに、プーチン政権の行方を見ることです。

※SAPIO2011年11月16日号

関連記事

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン