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破綻状態の東電社員にボーナス支給は考えられぬとの意見出る

 原発事故では多くの国民が郷里を追われ、住居や生活の基盤、家族の団欒さえ奪われた。依然として原発への不安がこの国を覆っている。にもかかわらず、東京電力の経営陣には反省のカケラもなく、今も独占企業の権力を振りかざす。

 西澤俊夫・社長はこういってのけた。

「料金値上げは事業者としての義務というか、権利だ」

 東電はこの4月から事業者向け電力料金の平均17%値上げを決め、家庭向け料金も10%程度の値上げを申請する構えだ。生活や産業に欠かせない電力供給を独占しながら、「値上げが嫌なら使うな」と臆面もなく恫喝する。

 この企業が原発事故の後もいかに放漫経営を続けているかの実態を知れば、国民は黙ってはいられないはずである。

 事故後、社員の給与・ボーナス合わせて2割カットを実施し、ボーナス支給額を夏冬合計で約77万円(組合員平均)に減額したことで“われわれも痛みを受け入れている”といわんばかりだが、元経産官僚の岸博幸・慶応義塾大学教授は厳しく批判する。

「巨額の賠償金を考えると東電は税金の投入がなければ倒産していた。事実上破綻状態にある企業が社員にボーナスを支払うこと自体考えられない」

 東電の改革は国民の目を誤魔化す名ばかりのものだ。まずは現在の給与水準。

 政府の第三者委員会(東京電力に関する経営・財務調査委員会)の報告書によると、大卒社員の年収は50歳で約1200万円、55歳で1300万円に達する。「2割カット」でも50歳で1000万円前後の年収が維持されている。さらに退職金や福利厚生が桁外れに手厚い。

 退職金(企業年金の事業主負担を含む)は大卒管理職が約4000万円、高卒の一般職は約3000万円だ。そのうえ、多くの企業で労使折半となっている健康保険料は会社が7割負担し、社員の「リフレッシュ財形貯蓄」には会社から年8.5%の利子補給がある。

 第三者委員会は退職金の引き下げ(それでも大卒管理職で約3500万円)や福利厚生水準を他企業並みに下げることを提案したが、今に至るまで給与2割カット以外、実施されていない。

 資産のリストラの面でも、発電所以外に多くのオフィスビル、ホテル、釣り堀まで簿価で約1兆2000億円の不動産を所有し、そのうち900件(時価換算2472億円分)を売却することになっている。だが、今年度売る計画はたったの152億円分にすぎない。

※週刊ポスト2012年3月9日号

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