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「生活保護は恥」は過去 今は“貰えるものは貰っておけ”に

 今年度予算の生活保護費は約3兆7000億円で、受給者は約209万人(152万世帯)。その中でも受給者の多い大阪・西成区では、毎月1日の支給日は通称「給料日」と呼ばれ、区役所前には9時に始まる支給手続きを待つ受給者の長蛇の列ができる。

 その後の光景も独特だ。今度は付近のパチンコ屋に200人以上の行列ができ、10時の開店と同時に1円パチンコの席が埋まる。そして生活扶助が遊興費に消えていくのだ(中には増やす者もいるのだろうが)。

 生活保護費の給付は、「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(生活保護法)を目的としている。が、このように生活保護費が自立(就職)どころか生活費にもならず、遊興目的に消えている現実がある。制度の趣旨に照らせば、「これも一種の不正受給ではないか」と思う納税者も少なくない。

 大阪府のケースワーカーとして勤務した経験を持つ道中隆・関西国際大学教授(社会福祉学)は自身の経験を踏まえてこう語る。

「私が現場にいた20年ほど前までは、受給者自身に“保護を受けることが恥ずかしい”“早くこの状態を脱したい”という意識があり、その親族も“身内から受給者を出したくない”という考えが強かった。

 受給世帯の子供がいじめられたりするという差別意識とも関係するので無条件にはその考え方を美化できませんが、個人主義で核家族化が進んだ今では逆に“生活保護で何が悪い”“貰えるものは貰っておけ”という権利の主張が当たり前になっている。何のための生活保護制度か、社会全体で考えるべき時だと思います」

※週刊ポスト2012年6月1日号

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