国際情報

次は日本? 中国漁船が遠洋に向かう理由は高い「みかじめ料」

 日本が、中国の輸出する国内問題と本格的に向き合わざるを得ない時代が始まりつつある。中国の漁師たちが外国とのトラブル覚悟で遠い海に向かうのは、ヤクザの縄張りのように漁業権が決められ、そこで漁をするのであれば高いみかじめ料を取られるからである。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

 * * *
 5月23日放送の上海の衛星テレビは実に興味深いレポートをニュース番組で報じていた。

 その内容は大連を拠点に遠洋に繰り出す中国の漁師たちの実情だ。彼らが漁師を取材対象に選んだ理由は、なぜ彼らが外国とトラブルになることが分かっている海へと向かうのか、その理由を知るためだ。

 名指しこそしなかったものの、最近の韓国での中国漁船の振る舞いが外交問題にもなっていることを受けた取材である。このレポートを通じて分かったのは、大連の地元漁師たちがどうして外国とのトラブルを覚悟で遠い海に向かわざるを得ないかの事情だった。

 その一つが水産資源の枯渇である。大連の近海は、彼らの証言によれば魚がいなくなっていて、水揚げ量もかつての3分の1程度にまで落ちてしまっているという。これは明らかに乱獲による弊害である。

 そしてもう一つの理由が、近海における漁業権の問題だ。近年、漁業権が地元有力者や権力者、成金に買い占められてほとんど地元漁師は魚を取ることができなくなっているというのだ。インタビューに応えた漁師たちは、その権利を侵して漁をして見つかれば、「暴力を振るわれ、罰金を取られる」と答えていたのが印象的であった。

 つまりヤクザの縄張りのように漁業権が決められ、そこで漁をするのであれば高いみかじめ料を取られるのである。そのため漁師たちは、どうしても外へ外へと向かわざるを得ないというのだ。

 こうして追い詰められた漁師たちが大量に韓国の海に向かってくるのだから、韓国の取締り当局者に犠牲が出るのも避けられなかったわけである。

 ただ、このことは中国との間に海の問題を抱える日本も無縁ではない。中国のこうした国内事情がもろに日本の海に輸出されてきて韓国が直面したと同じ激しい攻撃にさらされないも限らないのだ。

 その意味では、中国が輸出する国内問題と本格的に向き合わざるを得ない時代が始まりつつあるのかもしれない。

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン