国内

「業務命令による入れ墨調査は人権侵害」と大阪市労連書記長

 橋下徹・大阪市長が進めた「入れ墨調査」に労組側は猛反発している。だが、その主張は市民感覚とはかけ離れたものだ。「入れ墨はOK」とでも言いたいのか。ジャーナリストの武冨薫氏が、大阪市労連の書記長に聞いた。

 * * *
 地方公務員法30条(服務の根本基準)では、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務」し、「職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定めている。

 労組や弁護団は「幸福追求権」や「プライバシー」を楯に入れ墨は表現の自由だと主張するが、問題は職員の入れ墨が市民に恐怖心を抱かせ、公共の利益に反する場合、公務員として「個人の表現の自由」と、「公共の利益」のどちらが優先されるべきかである。

 橋下市長の立場は明らかだ。入れ墨が合法であっても「行政権力を持つ公務員としてふさわしくない」と市職員に限定して職員倫理規定で禁止するというのであり、ルールに従わない職員を処分するのは市長の権限である。

 しかし、この「入れ墨が公共の利益に反する」という問題について、労組や弁護団は明らかに誤魔化している。

〈仮に大阪市の公務遂行において、例えば福祉現場など、対象市民が弱い立場にあって市職員の入れ墨等に対して畏怖心を抱く恐れがあるという場合にあっても、入れ墨等の調査は全職員に記名式で回答を求める必要はなく、各職場の上司が個別に職員に確認し指導する等の方法によれば足りる〉と、調査手法の問題へと苦し紛れの論理のすり替えを行なっているのである。

 労組は、あくまで「職員は入れ墨OK」にしたいのか。大阪市労連の田中浩二・書記長にぶつけた。

「個人の表現の自由というのはあくまで弁護団の専門家としての見解。入れ墨やタトゥーがファッションの一部として認知されてきたとはいえ、直に市民に接する市職員のモラル、公務員としての資質が問われても仕方がない。だが、外から見える部分の入れ墨が問題なら所属長が個別に面談すればいい。業務命令によるアンケートという調査手法が人権侵害にあたる恐れがある、と抗議している」

 しかし、面談調査では、本人が否定すれば、上司は「入れ墨はない」と報告せざるを得ない。一方、文書による自己申告なら、文書管理を徹底すればプライバシーはより守れるし、本人が虚偽報告すれば即、処分対象になる。なれ合いも排除できるはずなのだ。

※SAPIO2012年6月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
(SNSより)
「誰かが私を殺そうとしているかも…」SNS配信中に女性インフルエンサー撃たれる、性別を理由に殺害する“フェミサイド事件”か【メキシコ・ライバー殺害事件】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
女性2人組によるYouTubeチャンネル「びっちちゃん。」
《2人組YouTuber「びっちちゃん。」インタビュー》経験人数800人超え&100人超えでも“病まない”ワケ「依存心がないのって、たぶん自分のことが好きだから」
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、大学進学で変化する“親子の距離” 秋篠宮ご夫妻は筑波大学入学式を欠席、「9月の成年式を節目に子離れしなくては…」紀子さまは複雑な心境か
女性セブン
品川区にある碑文谷一家本部。ドアの側に掲示スペースがある
有名ヤクザ組織が再び“義憤文”「ストーカーを撲滅する覚悟」張り出した理由を直撃すると… 半年前には「闇バイト強盗に断固たる処置」で話題に
NEWSポストセブン
現在は5人がそれぞれの道を歩んでいる(撮影/小澤正朗)
《再集結で再注目》CHA-CHAが男性アイドル史に残した“もうひとつの伝説”「お笑いができるアイドル」の先駆者だった
NEWSポストセブン
『THE SECOND』総合演出の日置祐貴氏(撮影/山口京和)
【漫才賞レースTHE SECOND】第3回大会はフジテレビ問題の逆境で「開催中止の可能性もゼロではないと思っていた」 番組の総合演出が語る苦悩と番組への思い
NEWSポストセブン
永野芽郁の不倫騒動の行方は…
《『キャスター』打ち上げ、永野芽郁が参加》写真と動画撮影NGの厳戒態勢 田中圭との不倫騒動のなかで“決め込んだ覚悟”見せる
NEWSポストセブン
電撃の芸能界引退を発表した西内まりや(時事通信)
《西内まりやが電撃引退》身内にトラブルが発覚…モデルを務める姉のSNSに“不穏な異変”「一緒に映っている写真が…」
NEWSポストセブン
入院された上皇さまの付き添いをする美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、入院された上皇さまのために連日300分近い長時間の付き添い 並大抵ではない“支える”という一念、雅子さまへと受け継がれる“一途な愛”
女性セブン
交際が伝えられていた元乃木坂46・白石麻衣(32)とtimelesz・菊池風磨(30)
《“結婚は5年封印”受け入れる献身》白石麻衣、菊池風磨の自宅マンションに「黒ずくめ変装」の通い愛、「子供好き」な本人が胸に秘めた思い
NEWSポストセブン