スポーツ

五輪日本女子の快進撃 「共感力」が後押しと女性作家が分析

 振り返ってみれば日本の女子の強さが際立った五輪だった、ということになるかもしれない。4年に1度の重圧に押しつぶされてしまう選手が少なくないなか、なぜ彼女たちは結果を残せたのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 いよいよ閉幕を迎えるロンドン五輪。今回は特に女子の競技で、「初」が目立ちました。サッカーも卓球もバドミントンもアーチェリーも、「初」のメダル獲得。女子バレーはなんと五輪で「初」めて、中国に勝利。女子のレスリングでは「初」の五輪ダブル3連覇……。

 どうしてこんなに「初」めての活躍ができたのか。

 もう一つ、目立ったのが「他者とのつながり」。

 レスリング金メダルの伊調馨は、引退した姉・千春の応援の声が「『天の声』みたいに聞こえてきて」戦いぬくことができた、とコメント。陸上の1万メートルでは、三人娘が円陣を組み、その団結力でレースを展開。自己ベストタイム・順位をマーク。レース後、三人が手をつないで健闘をたたえ合う姿が印象的でした。

 あるいは、サッカー決勝戦を前に澤穂希は「佐々木監督に金メダルをかけてあげたい」とコメント。ここにも、自分のためだけでなく他者のために戦う姿が、はっきりと見てとれます。「私一人の勝利ではない」「チームみんなの力でとった」という言葉もあちこちで聞かれました。

 今回の女子の活躍の背後に、もしかしたら、突出した「共感力」があったとは言えないでしょうか? 

 自分以外の他者に思いを馳せ、その思いに共感し、それを自分の力に転換していく能力。日本の女子選手は、そうした能力がバツグンに高かった、とは言えないでしょうか?

 それはまた、他人の感情を自分に写し取り、他人と自分を重ねあわせる「憑依力(ひょういりょく)」と言えるのかもしれません。「東北魂」「大震災の被災地を元気にしたい」ということを口にする選手も。他者の苦労や苦難、痛みを自分のことのようにリアルに感じとり、一緒に苦しみ、その苦しみを力に変えて、前に進んでいく。そうしたすぐれた「共感力」「憑依力」が、五輪の戦いを後押ししたのだとすれば……。

 女子に際立った「共感力」ですが、もちろん男子の中にもそうしたチームワークの可能性を感じるシーンがありました。

 たとえば水泳。基本的には個々人で戦う競技ですが、今回は「27人が一つのチーム。27人のリレーはまだ終わらない」(入江陵介)というコメントが注目を集めました。戦後最多となるメダルの獲得も「チームで勝ち取った」(平井伯昌ヘッドコーチ)。北島康介を中心に、選手がみごとな共感の輪を作り、それがたしかな勝負の力へと転化していった様子が見てとれました。

 他者の熱い思いや願い、痛みや苦しみを、自分のことのように感じ、前向きな力に転換して結果を出す。それがまた、誰かへの励ましになっていく。 今回のオリンピックで、お茶の間で応援している私たちがもっとも学ぶべきことは、そうした「共感力」の可能性です。

 スポーツに限らず、現実社会の中でも、そうした力が重い扉をこじあけることがある。そんな可能性を信じること、ではないでしょうか。


関連キーワード

関連記事

トピックス

《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
9年の濃厚な女優人生を駆け抜けた夏目雅子さん(撮影/田川清美)
《没後40年・夏目雅子さんを偲ぶ》永遠の「原石」として記憶に刻まれた女優 『瀬戸内少年野球団』での天真爛漫さは「技巧では決して表現できない境地」
週刊ポスト
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン