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浦安 震災義援金3.1億円が市庁舎改築・花火大会に使われた

 東日本大震災では、被災者救済を願う善意の浄財が、かつてない規模で集まった。日本赤十字社などに寄せられた義援金は総額3500億円以上にのぼる。

 日本赤十字社はホームページで、「お寄せいただいた義援金は、全額が被災された方々のお手元に届けられ、手数料などを日本赤十字社が取ることは一切ありません」と表明し、すでに3000億円以上が被災者に分配された。

 こうした全国的な組織が集める義援金とは別に、独自に義援金を募る自治体も多い。東京ディズニーリゾートの所在地として知られる千葉県浦安市もその一つ。市域の4分の3が液状化し、約8000戸の住宅が被害に遭った、「東京から最も近い被災地」である。

 浦安市では、「市内の被災された方への支援を目的に」(募集告知より)、2011年3月末から「浦安市災害義援金」を募った。浦安市民や市内の企業などから今年3月末までに集まった義援金は、総額3億1416万円。市はホームページ上で、「いただいた義援金は、浦安市内の被災された方への支援のために、有効に活用させていただきます」と感謝の意を表した。

 だが、被災市民の復興を願った人々の思いは、シロアリの悪知恵によって裏切られることになる。

 浦安市の義援金は被災者に一切分配されることなく、なんとそのまま自治体の懐に入ったのである。この驚くべき事実を告発するのは、折本ひとみ・浦安市議会議員(無所属)である。

「市の財政課に義援金について訊くと、『市の一般会計予算に入れる』というのです。つまり、義援金は被災者に分配するのではなく、市の事業に使うということ。担当者は『市の事業に使うものであることは、寄付する当事者に口頭で説明している』といいますが、そんなことはありません。

 事実、私が所属するボランティア団体は、市の要請を受けて義援金を出している。あくまで浦安で被害に遭った8000世帯に義援金が行き渡るようにと考えたからです。とんでもない裏切り行為ですよ」

 浦安市の財政課に尋ねると、平然と言い放った。

「浦安市では、義援金は市の災害復旧に活用することになっています。そのために義援金を一般会計で預かっている。このことは、今秋に公開される平成23年度予算の決算書に記載される予定です。義援金の用途は道路などの災害復旧に決まっているので、問題ありません」

 この屁理屈は、二重の意味で間違っている。

 内閣府防災基本計画の担当者は義援金の扱いについて、こう指摘する。

「義援金に関して法的な定義があるわけではありませんが、東日本大震災をきっかけに修正された『防災基本計画』のなかでは義援金に関する考え方が示されています。そこでは義援金は配分ルールを取り決めて、被災者にいち早く配分すべきものと定義されている。市民から義援金と称して集めたお金を、市の予算としてしまうのは、少なくとも道義的に問題であることは間違いありません」

 同じく義援金を募った千葉県旭市では、被災者に配る義援金と市への寄付金を明確に分けている。

 どうやら浦安市もその問題に気づいていたようで、何とも姑息なゴマカシを行なっていた。市は本年度から「災害義援金」を「災害復旧寄付金」という名称に改め、「被災者への義援金」を「市への寄付金」に衣替えさせたのだ。「誤解を生んだことに気づいたから変更したのではないか」と質すと、財政課担当者は「まあ、ええ、そうです」と認めた。

 もうひとつの詐術はさらにタチが悪い。市は「義援金の用途は災害復旧に決まっている」というが、3億円の義援金はいったん一般会計に組み入れられたが最後、他の財源と混ざり合って様々な用途に使われてしまうことだ。

 たとえば浦安市は、総額110億円をかけた市庁舎の建て替え計画を震災以前から進めており、昨年度は庁舎建設基金に1億円が計上されている。また毎年夏に行なわれる市の花火大会(今年は7月28日に開催)には、毎回7000万円が市の予算から拠出されている。

 こうした予算はすべて一般会計から出されるため、3億円の義援金も、これらの費用補填に使われたことになる。

 浦安市財政課はこのことについても、「確かに(義援金は)会計上何も区分せずに一般会計に入れているので、市庁舎建設や花火大会に使われているといわれても否定はできません」と、渋々認めた。

●レポート/福場ひとみ(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2012年8月31日号

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