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飲ませ食わせ抱かせ…カンボジアに進出した暴力団の現場ルポ

 昨年より施行された暴排条例により日本では「カタギ」との接触が厳しく制限される暴力団にとって、カンボジアは楽園だという。フリーライターの鈴木智彦氏が、ヤクザが現地高官を抱き込む現場に潜入した。

 * * *
 路地の生ゴミが腐臭を発していた。指定暴力団幹部がカンボジアの高官を連れ、はす向かいの高級レストランに現われた。横付けされた車はロールスロイスやベンツ、レクサスといった高級車で、東南アジアの途上国にいることを忘れそうになる。

 色艶をみるとほぼ新車で、関税や特別税は合わせて約200%だから、どれも日本円にして2000万円は下らない。月給100ドル足らずのカンボジアの庶民は一生働いても買えない。 「紹介するよ、俺のケツ持ち」

 ケツ持ちとは背後で暴力をちらつかせ、最短距離で利益を“かっぱぐ”ための後見人的存在のことだ。風通しがよさそうな半袖シャツの3人は、それぞれ名刺に軍幹部、警察幹部、国会議員と刷っていた。多額のワイロで買収された彼らは、ごく当たり前のように暴力団と食事し、遊興し、時折パーティにも出席する。日本の警察が知れば腰を抜かすだろう。

 かつて山口組大幹部だった後藤忠政・元後藤組組長も、引退後に上梓した『憚りながら』が累計20万部以上の大ヒットとなった際、印税のすべてをカンボジアに寄付した。日本の慈善団体の多くが寄付を拒んだからだが、その後、後藤氏はカンボジアに渡り、プノンペンの高級マンションに居住している。

 幹部のホストぶりは手慣れていた。クメール訛りの英語も見事だったが、2時間ほど歓談して見送ると、幹部の顔つきが変わった。「くそったれ!」と吐き捨て、旧宗主国フランス製の『ジタン』という煙草を口にした。
 
「顔つなぎのため定期的に2~3人呼んでる。金と手間の節約だ。毎回、ここぞとばかりにタダ食い、タダ酒される。見ただろう、今夜も500ドルは使った。日本じゃ4万円など微々たる金だが、カンボジアでは大金だ。40万~50万たかられた気分だ!」

 バイクタクシーに乗ってUターンすると路上のゴミが再び見えた。遅れて腐臭が鼻をつく。後日、裏を取ったところ、3人の素性は本物だった。幹部は実質1年でここまで政府に食い込んだという。カンボジアが世界汚職ランキングで183か国中164位となっている事実も頷ける。

 暴力団がカンボジアのパイプ役に政治家、軍部、警察幹部などを選んでいるのは、国家の持つ暴力の力を熟知しているからだ。日本国内で警察から弾圧され続けても刃向かわず、面従腹背してきただけあって、カンボジアでの暴力団は暴力装置を持つ、もしくは動かせる人間にしか投資しない。

 冒頭の例もそうだが、暴力装置の占有者たちをたらし込む最も効果的な手段は現金という実弾である。こうした場面での暴力団はまことに気前よく、また侠気に溢れている。数ある国家の中でカンボジアに目を付けたのも、汚職が蔓延し、なにもかも金で解決できるからだった。もちろん投資した金を回収する算段は幾重にも計画されていて、さすがプロだと唸らされる。

「ワイロは物事を頼む度、別途入り用になる。内容によって違うが、俺の場合、3000ドルから5000ドルが平均だ。悪いなんて感覚、ヤツらにはねぇ。給料は最初から立場を利用して金を稼げといわんばかりに安いし、敬虔な仏教徒が多いカンボジアだが、仏教的にも感謝の気持ち、お布施ってわけで問題ないんだろう。

 払ったワイロの分だけ利権はいただくし、相応のことはしてもらう。取り締まりに目をつぶってもらったり、1か月かかる手続きを1週間にショートカットしてもらうなど色々だ。でもカンボジア人は口で言うほどたいしたことはしてくれない。この国の役所は完全な縦割りで、他の省庁が口出しできないようになってる。口を利いてもらったわりに見返りは少ないね。

 特別なにかしてもらわなくてもメリットはある。日本から小金持ちを連れてきて、入国審査をフリーパスで通過させ、空港からホテルまでパトカーで先導してもらえば、たいていの人間は信用する。あとはさんざん飲み食いさせ、女をあてがえばホイホイ金を出す。俺としちゃそれだけでも十分だ」(冒頭の幹部)

※SAPIO2012年9月19日号

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