国際情報

中国知識人グループが改革要望書 政治は「民高党低」の傾向

 中国の政治状況は依然、予断を許さない。ジャーナリスト・富坂聰氏が“水面下の動き”についてレポートする。

 * * *
 政権交代を終えたばかりの中国の年の暮、共産党の足元を揺るがすような話題がネットを舞台に湧き上がった。

 発信源は、中国の大学教授や弁護士など約70人からなる知識人のグループであった。

 彼らがインターネットを通じて発表した要望書は、〈改革共識倡議書〉と題されていた。共産党政権に求めたのはズバリ「政治改革」だった。

 政治改革の中でも彼らがとくに指摘しているのは、「党と政府の分離」や「自由な選挙」、そして「報道の自由」など西側社会では至極当たり前なものだが、そもそも共産党政権にとっては絶対に認められないものばかりである。

 ネットを通じて突きつけられたこの要望に対し、党は現在のところ静観していて何のリアクションも示していない。

 こうした政治改革や民主化の要求ときけば真っ先に浮かぶのが2008年の「〇八憲章」である。ノーベル平和賞を受賞しながらいまだ国家転覆の罪で収監されている劉暁波らが発表したものだが、今回の要望書は「〇八憲章」に比べて穏やかな内容になっていることに加えて、「汚職の撲滅」や「職権濫用の取り締まり」など、庶民が共感する内容が並べられている。

 起草者の一人である北京大学の教授はメディアの取材に対し、「要望書の中身は、1982年に改正された中国の現行憲法にある内容に沿ったもので現実的な提案だ」と語っている。

 このニュースの興味深いところは、中国が憲法などで歌っている民主的な部分を「実行してほしい」と要求している点だ。中国は憲法の上では非常に民主的であるはずなのだから、実際にもそのようにすべきだと、建前だけのきれいごとは許さないと婉曲的な批判をしているのだ。

 彼らが指摘した一つひとつはすべて共産党には頭の痛い問題だが、いずれも自ら憲法にうたっていることだとなれば、こうした要求を突き付けた者を裁くわけにはいかないというわけだ。

 政権に対する賢い挑戦と言わざるを得ないが、それよりも重要なのはやはり共産党政権の権威の失墜とガバナンスの低下がこのことからも読み取れるということだ。

 政治における「民高党低」の傾向は2013年のキーワードになるかもしれない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

およそ揉め事を起こしそうにない普通の人たちがカスハラの主役になっている(写真提供/イメージマート)
《”店員なんて赤の他人”的な行為が横行》条例施行から2か月、減らないカスハラの実態 都内のコンビニ店員が告白「現役世代のサラリーマンが…」品出し中に激突、年齢確認にブチ切れ、箸に”要らねえよ”
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン
大谷夫妻の第1子誕生から1ヶ月(AFP=時事)
《母乳かミルクか論争》大谷翔平の妻・真美子さんが直面か 日本よりも過敏なロスの根強い“母乳信仰”
NEWSポストセブン
麻薬の「運び屋」として利用されていたネコが保護された(時事通信フォト)
“麻薬を運ぶネコ” 刑務所の塀の上で保護 胴体にマリファナとコカインが巻きつけられ…囚人に“差し入れ”するところだった《中米・コスタリカ》
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
〈ちゅーしたら魔法かかるかも?〉被害女性が告白する有名ホストクラブの“恐ろしい色恋営業”【行政処分の対象となった悪質ホストの手練手管とは】
NEWSポストセブン
公務のたびにファッションが注目される雅子さま(撮影/JMPA)
《ジャケットから着物まで》皇后雅子さまのすべての装いに“雅子さまらしさ“がある理由  「ブルー」や小物使い、パンツルックに見るファッションセンス
NEWSポストセブン