常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
レトロな装いでカメラに向かう、女優・常盤貴子。撮影で訪れた海辺のホテルは彼女の「行きたいところリスト」に入っていた場所。好きなものや会いたい人など心のアンテナに触れれば、身軽に旅に出るのだとか。
若い頃から旅はよくしていたが、当時は楽しむより次の作品へ向けて前作の役を“抜く”ための気分転換だったという。2年半全クールでトレンディドラマの主演を務め、1990年代に「連ドラの女王」と称された時代を振り返る。
「お芝居は役作りの作業が楽しく、あれやこれや考える時間がワクワクするんです。体力的にきつくても、大好きなことができている喜びで大変と思ったことはなかった。『連ドラの女王』と呼ばれることも、あの頃は日々の撮影に必死過ぎて全く気にしてなかったですね(笑)」
夢中で走り続ける過程では自分の状況を客観視できなかったが、ふと「インプットをアウトプットが超えている」と力尽きて、立ち止まったと語る。
その後は映画や舞台にも活動の場を広げ、監督や名優との新たな出会いで女優としての深みを増していった。
かつて本誌『週刊ポスト』が『釣りバカ日誌19』(2008年)のロケに密着した際には、“ハマちゃん”の横で溌剌とヒロイン役に臨む彼女の姿があった。
「西田敏行さんは普段から面白くて、スタッフを笑わせる天才でした。大切な仲間だからこそ、笑っていてほしいと思ってらしたんじゃないかなぁ。俳優としても、人としても勉強になりましたね」
芸歴30年を超え、プライベートの衣食住や仕事観、人生観を綴ったフォトエッセイ『小さな幸せで満たす日々』を上梓した。
「執筆作業は自分を見つめるいい機会になりました。若い頃はお芝居のことで頭がいっぱいだったけれど、歳を重ねて、視野も行動力も広がったことに気付きました。私の50代のテーマは『即興力』。心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたいです」
【プロフィール】
常盤貴子(ときわ・たかこ)/神奈川県出身。1991年に女優デビュー。『愛していると言ってくれ』『Beautiful Life』(ともにTBS系)など数々のヒットドラマのヒロインを演じる。2004年に映画『赤い月』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、2015年に『野のなななのか』で高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。現在、情報番組『京都画報』(KBS 京都・BS11・TOKYO MX)でナビゲータを務めるほか、NHK Eテレ『おとな時間研究所』に司会として出演中。フォトエッセイ『小さな幸せで満たす日々』が主婦と生活社より発売中。
撮影/野口貴司 写真はWeb LEON連載「美しい人」より
プロデュース/Kaori Oguri 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2025年6月6・13日号