およそ揉め事を起こしそうにない普通の人たちがカスハラの主役になっている(写真提供/イメージマート)
近年、たびたび問題となっているカスタマーハラスメントについて、国会では立憲民主党と国民民主党が共同で対策法案を議員立法で提出、自民党も対策を企業に義務づける提言案をまとめ、厚生労働省は法改正に着手した。法律の動きに先んじて、2025年4月1日から東京都、北海道、群馬県などでは全国初のカスタマーハラスメント防止条例が施行された。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、カスハラ被害の現場をレポートする。
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「減るどころかいまだにカスハラだらけですよ。それどころか理不尽なお客が増えているように思います」
都内コンビニエンスストアのベテラン男性社員スタッフ。あの複雑怪奇なシステムを毎日難なくこなし続ける、まさにマルチタスクの達人と言ってもいい。
都心ではとくに外国人のスタッフも増えたが留学生だけでなく、2019年からは日本語能力の認定や日本の大学卒業、大学院修了などの条件を満たせば「特定活動46号」と呼ばれる在留資格にもなっている。
東京都では4月1日から「カスタマーハラスメント防止条例」が施行された。このカスハラ条例に定められたカスタマーハラスメントの定義としては以下の通り。
●顧客等から就業者に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するもの。
●著しい迷惑行為とは、暴行、脅迫その他の違法な行為または正当な理由がない過度な要求、暴言などの不当な行為。
具体的には、
●人格を否定する言動
●電話等での拘束、わいせつな言動
●長時間の居座り、つきまとい行為
●SNSで顔や名札を晒す、名指しして中傷
が挙げられている(『広報東京都』2025年4月号より抜粋)。
しかしカスハラ条例の施行から2ヶ月あまり、現場で聞く限り目立った効果はないとのこと。そもそもこの条例には罰則がない。いわゆる「理念条例」というやつだ。