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大御所写真家の「ネコ偏愛トーク」が生々しすぎると女性作家

 ネコ好きにはたまらない番組がある。ネコの大ファンを自認する作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏も熱心な視聴者のひとり。だが、愛おしさゆえに注文もあるようで。

 * * *
 北極クマ、あざらし、ライオン。美しい動物写真を数々撮影してきた、大御所写真家・岩合光昭氏。一方で、ネコ好きでも有名です。路地ネコの写真を長年撮り続け、カレンダーや写真集を刊行し、人気を博しています。

 その岩合氏がナビゲートする番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK BS)。地中海の美しいブルーを背景に、あるいは活気に満ちた市場の中で、無邪気に遊ぶネコたちの姿がいきいきと映し出される。

 トルコ、ギリシャ、イタリア、アメリカ……世界中のネコを追いかけていく岩合氏。殺伐としたこの時代だからこそ、ネコの「のんびりした日常」が、実に優雅に際立ってくるドキュメンタリーではないでしょうか。時々、NHK BSで放映されてきたこの番組が、いよいよ4月から月1回のレギュラー化。これも、ネコと岩合氏の人気の証、ということでしょう。

 番組の特徴はまず、ネコ目線で追いかけるカメラ。トコトコと走っていくネコのお尻を、地面すれすれの視線で追跡したり。丸くなって座るネコの鼻先に、ぐぐぐっとレンズを接近させたり。ネコパンチ、しっぽをふくらませるといったしぐさから、ネコが今何を感じ考えているのか!? を読み解いていく岩合トークも、番組の個性を彩っています。

 でも……ネコの大ファンだからこそ、ひとつだけお願いしたいことがある。ネコ相手の「ねっとりトーク」についてです。

「きれいだねぇ、かわいいよ~」
「彼女は、お姫様気分でいます」
「首筋をやさしく噛んだのでしょう」
「モデルになってもいいわ、といってます」
「彼女の身体はたいへんきれいなんですね、いい顔してるなぁ」
「今、やきもち焼いてます」……ネコに対して発せられる岩合さんのコトバの数々。まるで、グラビアモデルを見つめる男のつぶやきか。

「ネコ大好き」ということはよく伝わってきます。

 でも。

 一視聴者としては、ネコのしぐさや表情にただ純粋に見とれて、没入したい。わずかな時間癒され、現実世界のウサを忘れさせて欲しい。そこへ「ねっとりおじさんトーク」が差し挟まれてくると……たちまち、夢から現実に引き戻されるような、冷や水を浴びせられるような、そんな気分に。そう、生身のオトコが若いオンナを観察しまわしているような、現実の生々しさがたちこめてしまうのです。

「彼女は…」とか「キミは美人だね」とかいう擬人化に、やたら男→女の目線。「世界ネコ歩き」には特に必要ないんじゃないでしょうか。それさえなければ満点なのに、とちょっと残念。

「『何で猫なんですか?』と言われますが、それは猫を差別しているのです。クジラの方が上だと思っているのでしょうが、そんなことはない。猫をばかにすると怒られますよ」(『毎日新聞』2013年2月28日)と岩合さんは熱く語っています。

 ネコへの愛がつい、「ねっとりトーク」になってしまうのかもしれませんが、女性視聴者も多い番組。そのあたり少しだけご配慮のほどよろしくお願いします。

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