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弁当店もホテルのレストランも「カット野菜」を使っている訳

 食品業界や農業関係者から成長分野として期待されている「カット野菜」。伸びていると言われながら、これまで具体的な大きさが見えてこなかったが、昨年から今年にかけて、その実態が徐々に明らかになりつつある。

 平成21~24年度までのPOS(販売時点情報管理)データを収集し、カット野菜の需要動向を分析したところ、千人当たりの販売個数、金額ともに伸び続けていた。販売個数が平成21年度に比べて平成24年度は189%、金額では同時期比較で177%という右肩上がりの結果だ(独立行政法人農畜産業振興機構調べ)。

 また平成24年以降は、野菜の価格が安くなってもカット野菜の販売個数がそれほど変動しない傾向を見せており「調理をせず使いきりができる等のカット野菜の利便性を知った消費者が、価格に関わらずリピーターとして定着してきた」(農畜産機構野菜需給部)と分析されている。

 さらに、昨年度に実施された「カット野菜需要構造実態調査」(農畜産機構)によれば、「カット野菜原料」の市場規模は約600億円、「カット野菜製造」の市場規模が約1,330億円、「カット野菜販売」の市場規模は約1,900億円と推定され、カット野菜販売の市場規模はインスタントコーヒーの市場規模と同程度の大きさに成長しているという。

 前出の農畜産機構野菜需給部によると、今回の調査は本年度が初めてだったため、時系列での調査を行っておらず具体的な伸長程度はわからないと前置きしながらこういう。

「製造業者へのヒアリング調査では、今後も事業を拡大したいという意向が多かったこと、単身世帯や共働き世帯の増加等を背景に食の簡便化が進むと考えられることから、今後も伸びていくことが予想されます」

 サラダ向けの生野菜が多くを占める商品“カット野菜”は、どういった形で販売数を伸ばしているのか。その製造販売先の構成割合をみると、販売額ベースで外食業者や中食業者に5割、小売業者に4割を販売していることがわかる(農畜産機構調べ)。コンビニやスーパーで売り場面積を増やしていることが目立つが、外食と、弁当や総菜などの中食でもニーズは高いのだ。

 伸長するカット野菜市場を象徴するかのように、製造販売大手の東京デリカフーズは、2013年3月期の売上高、純利益ともに過去最高を記録した。7月には野菜の管理から加工、出荷まで同じ建物の中で完結できる第二FSセンターが東京都足立区に竣工し、今期も増収見込みだ。

「加速する食の安全意識の高まりと、外食産業全体で技術がある人を雇用しづらくなったため、プロの手で加工・管理されたカット野菜が必要な時代になったんです。今ではファミリーレストランやファストフード、コンビニのベンダーさんだけでなく、ビジネスホテルへもカット野菜を販売しています。将来は、野菜のプロとしての技術をもって、海外へ進出することもありますよ」(東京デリカフーズ・大崎善保代表取締役)

 最低賃金が上昇し、アルバイトやパートであっても離職率が高いことから、規模の大小を問わず飲食業界では調理を安心してまかせられる人を確保しづらくなっている。衛生状態を保つにも付け焼刃では難しいため、調理場はどんどん簡素になっている。コストと安全の両面から、袋を開けて仕上げをするだけに整えられたカット野菜が重宝されているのだ。

 カット野菜は今やサラダ用の生野菜だけにとどまらず、煮物用の根菜類なども求められている。肉じゃがや風呂吹き大根など、根菜類の煮物を食べてきた人たちが高齢者となり大きな野菜を自分でカットするのが難しいと惣菜で済ませたり、すでに加工された根菜で煮るだけの手軽さを求めるようになっているからだ。

 順風満帆にみえるカット野菜業界だが、不安な点もある。

「野菜というのは、食中毒を起こさないよう慎重に取り扱わねばならないものです。弊社はISO2200の認証を取得していますが、残念ながら、すべての製造業者がその水準にないのが実情です。一度、カット野菜関連で食中毒など事故が起きてしまうと、消費者は敏感で安全なものも売れなくなる。業界をあげて安全を担保していかねばならない」(前出・大崎善保代表取締役)

 カット野菜がなければ毎日の食生活が成り立たなくなる日が近いのかもしれない。

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