国内

学費を賄えず半年で大学中退の21歳 奨学金返すために風俗へ

 数年前から、奨学金を返さない人が多いために、奨学金そのものの運営が困難になっているという。未返還金は総額876億円にものぼる。その返済のために風俗業へ転身する女性たちを、作家の山藤章一郎氏がリポートする。

 * * *
 21歳。神田外国語大学を中退したアカネが、ペペロンチーノに粉チーズを一心不乱にふりかけている。高円寺のイタめし屋。

「あたし、子どもの時からこれ、なんにでもかけちゃうの。母親に恋人がいて3、4日帰ってこない。家、横浜。で、両親離婚して、母子家庭。母親いないとき、ご飯にも納豆にも粉チーズかけてた」

 頼んだ用紙を持ってきていた。テーブルに置いてある。〈貸与奨学金返還確認票〉という。〈日本学生支援機構〉の発行。アカネの〈借用金額〉は70万円。その数字が大書されて、〈貸与〉の〈期間〉〈月額〉〈計〉の記載がつづく。母親と叔父が連帯保証をしている。で、70万をどう返す。

 眼だけが格別大きく、とんぼ顔のアカネは、パスタをフォークに巻きつけながら口をとがらせた。

「でしょう? 見て、そこ。返還回数120回。割賦金って、なに? まあ月々割って返せってことでしょうけど。ほれでなに? 利子込み総支払額82万2963円よ。親におカネがあったら借りなかったよ。高校時代の居酒屋とサンドウイッチ屋のバイトでなんとか大学に入ったの。でもそのあと、教科書、副読本、施設費、コンパって。後期に突入する前に、払えなくなって結局退学です」

 で、五反田のガールズバーのバイトに出た。1晩7500円×22日=16万5000円。家賃、5万2000円。スマホ、1万4000円。奨学金、6935円。食費1食500円×3=1日1500円。ほかに光熱費、交通費がかかる。

「3食菓子パン、牛乳で流し込む日もあって。粉チーズも買えない。栄養不足でずっと口内炎でした」

 一念発起した。来週から鶯谷でデリヘル仕事に転ずる。

「粉チーズや食材を気兼ねなく買い、スマホも使い、奨学金返して、贅沢せず貯金に励みます」

 そして身を乗り出した。

「子どもの貧困を断つ法の制定を求めるデモ……大学の同級生が実行委員長になってるの。明日、代々木公園へ、一緒に行かない?」

※週刊ポスト2013年6月14日号

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された愛子さま(2025年5月8日、撮影/JMPA)
《初の万博ご視察》愛子さま、親しみやすさとフォーマルをミックスしたホワイトコーデ
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン