国内

元自民長老 安倍氏は靖国に行かず尖閣に自衛隊送らず逃げた

 日本政治を憂い、村上正邦氏(元自民)、矢野絢也氏(元公明)、平野貞夫氏(元民主)、筆坂秀世氏(元共産)という4人の“賢人”が集まった。長年の経験としがらみのない立場だからこそ語れる、歯に衣着せぬ座談会。安倍首相の持論である憲法改正問題について話し合った。

村上:そもそも安倍に経済のことなんか誰も期待していないんだよ。しかも口では経済、経済といいながら、基本的に人任せだし。

 彼は戦後レジームから脱却して「美しい国」「強い日本」を取り戻すんだといってきた。それなのに靖国神社には行かない、尖閣には自衛隊を送らないで、結局ぜーんぶ逃げた。憲法改正だって、第96条、つまり憲法改正の手続きを先行させるといっているが、これこそ逃げです。

平野:その通り。

村上:憲法は国の骨格を作る基本なんだから、安倍は憲法をどう変えるかをまず示すのが先でしょう。ところが、中身を出すと公明党との連立が危うくなるような雰囲気があるから、これも逃げている。

平野:実は現在につながる96条改正論議に最初に火をつけたのは私たちなんです。自自連立の小渕内閣時代に決算委員会で、国民投票法を問題にして「欠陥憲法じゃないか」と突き上げたことがある。参院で憲法調査会もつくり、ここにおられる村上さんに初代の会長をお願いした。

村上:私が会長をやらせろといったんです(笑い)。しかし私らがやっていたのは、96条だけ改正するなどというセコイ話じゃない。

平野:いまになって、よもや96条だけ取り出して改正するなんて話になるとは、誰も思ってもいなかった。

矢野:改正の中身を見せないで、簡単に改正できるようにするというのは、国民に白紙委任状を渡せといっているも同然、傲慢ですね。

平野:おっしゃる通り。

筆坂:戦後レジームは何も憲法の話だけではなくて、日米安保体制、在日米軍の存在も戦後レジームでしょ。果たしていまの日本は独立国といえるのか。安全保障でも経済でも、アメリカのいうことを聞かずに何もできないじゃないか。そんな状態で自主憲法を制定することなんてできるのか。自民党が1955年にできたときの結党宣言では、自主憲法制定だけじゃなく、外国駐留軍の撤退もはっきり謳っていたんです。憲法9条を改正して軍隊をもち、在日米軍には出ていってもらうと。

村上:憲法改正の核にアメリカがある。そこから逃げてるから安倍は卑怯なんだ。

筆坂:私は護憲論者にもいいたいことがある。彼らにとって9条は宝になっているけれども、なぜアメリカは戦争放棄で軍隊ももたないという条文を入れたかというと、米軍が駐留するつもりだったからです。護憲派の人々は在日米軍が大嫌いですが、9条と在日米軍はセットで、9条を厳密に守って在日米軍が出て行くと日本は丸裸になって困るわけでしょう。護憲派はリアリズムに欠けている。だから、改憲派も護憲派もアメリカの存在を見て見ぬふりをしてごまかしている。

平野:憲法改正の論議ではパラドクスがいろいろあるんですよね。昭和60年ごろ、中曽根内閣の当時、与謝野馨さんに「護憲派の勝利の功労者は社会党の土井たか子じゃない。中曽根さんだ」と進言したことがある。というのは、戦後の吉田茂内閣のころ、憲法改正のチャンスは昭和20年代、30年代の2度あったんですが、そのたびに中曽根さんが極端な再軍備論を展開したため、選挙で野党が国会の3分の1以上に勢力を伸ばして改正できなくなったから。この話が中曽根さんの耳に入って呼び出されたんですが、逃げました(笑い)。

【むらかみ・まさくに】1932年生まれ。1980年に参議院議員初当選。自民党国対委員長、労働大臣、参議院自民党幹事長、参議院議員会長を歴任した。

【やの・じゅんや】1932年生まれ。公明党立党に参加し、1967年に衆議院議員に初当選。公明党書記長、委員長、最高顧問を歴任。

【ふでさか・ひでよ】1948年生まれ。日本共産党入党後、1995年に参議院議員初当選。党中央委員会常任幹部会委員、書記長代行などを務めた。

【ひらの・さだお】1935年生まれ。衆議院事務局に務めた後、1992年に参議院議員初当選。自民党、新進党、自由党、民主党を渡り歩いた。

※週刊ポスト2013年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
尹錫悦前大統領(左)の夫人・金建希氏に贈賄疑惑(時事通信フォト)
旧統一教会幹部が韓国前大統領夫人に“高級ダイヤ贈賄”疑惑 教会が推進するカンボジア事業への支援が目的か 注目される韓国政界と教会との蜜月
週刊ポスト
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン