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竹工芸の人間国宝・藤沼昇氏(68) 修業期間はわずか1年半

世界が惚れ込む竹工芸の人間国宝・藤沼昇氏

 2012年に「重要無形文化財保持者」(通称・人間国宝)に認定された、竹工芸の藤沼昇氏(68歳)。1000万円、2000万円という値段のつく藤沼氏の作品の販売先は、95%がアメリカだ。

 15年ほど前にアメリカ人のエージェントが訪れ、藤沼氏の作品に感動、アメリカでの展開を持ちかけてきた。2001年からはシカゴのアートショーに毎年出品して高く評価され、大英博物館やシカゴ美術館にも所蔵されている。

 カメラマンをしていた27歳のとき、ヨーロッパ旅行で立ち寄ったパリで人生が変わった。藤沼氏が語る。

「シャンゼリゼの石畳に立ったとき、日本も負けていないんじゃないかと思ったんです。よし日本人として何かやってやると。日本文化の勉強から始めました」

 日本に戻ると、出身地の大田原で昔から盛んだった竹工芸の道を選んだ。修業は1年半のみ。竹材の選定や調製、編組など、基本的なことだけを習得した。「根曲がり竹」を荒編みした力強い作品もあれば、多様な編組技法を取り入れた繊細な作品もあるが、共通するのは現代的な感覚。竹工芸界に新風を吹き込んだ。

「誓っているのは、他の人と同じことをやらない、一つでいいからオリジナルの技法を使うこと。職人は上手に作れても創造しない。作家はどうプレゼンテーションするかが大事で、それはデザインにかかっている。最近はデザインが降臨してくるんです」(藤沼氏)

 製作が始まれば誰にも会いたくなくなるほど没頭する。作品は確かな技に支えられている。

撮影■藤岡雅樹

※週刊ポスト2013年6月28日号

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