国際情報

中国政府 抗議デモの激化恐れ大気汚染対策費3倍増の27兆円

 中国政府は今後5年間で1兆7000億元(27兆2000億円)もの巨費を投じて、微小粒子状物質(PM2.5)などを原因とする大気汚染対策に取り組むことになった。実は政府は昨年末、大気汚染対策として2013年から2015年までの3年間で3500億元(5兆6000億円)の予算を組む計画を発表していたが、年間平均で一挙に3倍も予算を増やしたことになる。

 この裏には、環境汚染をめぐって、中国全土で抗議デモが多発しており、一歩間違えば大規模な民衆暴動につながりかねないとの習近平指導部の危機感が反映されているのは間違いない。

 中国では3月の全国人民代表大会(全人代)で、周生賢・環境保護大臣が、全国的な環境悪化の責任を激しく追及され、全人代では珍しく一時は激しい怒号が飛び交った。周氏は同大臣に再任されたが、この人事について賛成2734票、反対171票、棄権47票と反対票と棄権票が218票と全体の1割近くなるなど、異例の事態となった。

 さらに、全人代後も北京市人民代表大会(北京市議会)の委員らが周氏の更迭を求める公開署名を発表するなど、周氏の環境行政に激しい批判が加えられた。

 これもあって、北京市人代は「北京市大気汚染予防対策条例(草案)」を提出し、年内をメドにPM2.5など大気汚染の原因物質の除去に全力で取り組む姿勢を示した。

 その後、中国政府は今後5年間の大気汚染対策として、当初予算を3倍にした緊急大型予算を発表。とりわけ大気汚染が激しい北京や天津市、河北省など中国北部の大気汚染を2017年までに、2012年の大気汚染の25%減レベルまでにするとの方針を打ち出した。

 中国では環境問題について市民の関心が高まっており、つい7月上旬には広東省で核燃料工場の建設計画反対のデモが行われ、省当局はあっさりと計画を撤回した。また、5月には雲南省でも中国の石油大手の中国石油天然ガス集団(CNPC)が昆明市郊外での石油化学工場の新設を計画していたところ、民衆の抗議デモが激化し、計画は中止に追い込まれた。

 これについて、『習近平の正体』の著書もあり、中国問題に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏は「習近平指導部の主な支持層は改革・開放路線で経済的な恩恵を受けた中間層だ。習主席も彼らの反対運動を弾圧することは現政権の不安定化を招くことになりかねない。このため、習指導部は民衆の意向を無視できず、民衆運動には慎重に対処することになろう。それが民主化運動に発展する可能性も少なくないため、今後も難しい対応を強いられるのは必至だ」と指摘する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン
2人は結婚3年目
《長髪62歳イケオジ夫との初夫婦姿》45歳の女優・ともさかりえ、3度目の結婚生活はハッピー 2度の離婚を乗り越えた現在
NEWSポストセブン
オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン