ライフ

バイオチップ使う超早期がん診断法 少量の血清使う方法存在

 血液中にがん細胞が見つかれば、身体のどこかにがんが発生していることになり、血液中のがん細胞は転移の原因となる。血液10ccに1個のがん細胞があれば、血液全体には約400~500個のがん細胞があると推測されるが、それより少ない場合は検査した10cc中にがん細胞が入っていない可能性もある。さらに検査機器や検査費用が高い割に検出漏れも多く、血液中のがん細胞を見つける診断法としては効率が悪かった。

 なんとか血液中の循環がん細胞を正確に効率よくキャッチしたいと研究されたのが、バイオチップを使った超早期がん診断法である。開発者の一人、昭和大学医学部専任講師で横浜市北部病院消化器センターの伊藤寛晃医師の話。

「血液中にはがん細胞そのもの以外にも、がん本体からはがれ落ちた破片や、免疫細胞に破壊されたがん細胞から散らばる異常なDNAなど遊離核酸(タンパク質)が相当量循環しています。従来あまりに小さくて発見できなかった遊離核酸を、半導体の品質管理にも使用される超高感度検出技術応用のバイオチップでキャッチし、そこにレーザーを当てて、光の散乱による波形で、がんを診断するシステムを開発しました」

 バイオチップは独自の先端技術を持つマイテック(神戸市)が開発したもので、銅の基盤に微小の銀の粒を線状に付けたもの。医療用に銀に特別な試薬を加え化学変化を起こし綿菓子のように3次元的に膨らませ、タンパク質が付着しやすいよう表面積を増やしている。直径約5ミリのチップに血清を1滴落とし、レーザー光線を当てて光の散乱を見る。20地点を瞬時に計測し、平均や積算を行ない波形としてモニターに表示する。

「良性疾患と比較して、がんによる特徴的な波形がはっきり表われました。1000倍希釈の血清でも、早期がんと進行がんでは波形や散乱の強さに差が出ました。さらにリンパ節転移があるかどうかも推測可能です。少量の血清で幅広い超早期がん診断もでき、治療の選択肢も広がってくると思います」(伊藤医師)

 今回の臨床研究は遊離核酸を網羅的に診断したが、バイオチップを加工し、特定のがんの抗体を付けることで、そのがんだけの診断も可能だ。現在、呼吸器系のがん、子宮がんなど他の臓器のがんでも研究が始まっている。今後、高度先進医療申請予定だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2013年11月29日号

関連キーワード

トピックス

食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
雅子さまは免許証の更新を続けられてきたという(5月、栃木県。写真/JMPA)
【天皇ご一家のご静養】雅子さま、30年以上前の外務省時代に購入された愛車「カローラII」に天皇陛下と愛子さまを乗せてドライブ 普段は皇居内で管理
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
本誌『週刊ポスト』の高利貸しトラブルの報道を受けて取材に応じる中条きよし氏(右)と藤田文武・維新幹事長(時事通信フォト)
高利貸し疑惑の中条きよし・参議院議員“うその上塗り”の数々 擁立した日本維新の会の“我関せず”の姿勢は許されない
週刊ポスト
東京駅17番ホームで「Zポーズ」で出発を宣言する“百田車掌”。隣のホームには、「目撃すると幸運が訪れる」という「ドクターイエロー」が停車。1か月に3回だけしか走行しないため、貴重な偶然に百田も大興奮!
「エビ反りジャンプをしてきてよかった」ももクロ・百田夏菜子、東海道新幹線の貸切車両『かっぱえびせん号』特別車掌に任命される
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン