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「2013年=煮ればいいさ」で結局うどんの年だったと識者指摘

 2013年はうどんが大きくクローズアップされた年だった。「大人に必要なことはすべてうどんから学べる」。伊勢うどん大使も務める大人力コラムニスト石原壮一郎氏が語る。

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 多くの方が感じているとおり、2013年はひと言で言って「うどんの年」でした。8月には東京で第一回の「U-1グランプリうどん日本一決定選手権」が行なわれたり、秋にはあの「マルちゃん正麺」シリーズからうどんが発売されたり、伊勢神宮の式年遷宮で伊勢うどんの知名度や人気が一気に上昇したりなど、「2013=煮ればいいさ」の年にふさわしく、うどんの話題に事欠かない一年だったと言えるでしょう。

 そんな一年を太く華麗に締めくくるべく、暮れも押し迫った頃、日本でただひとりの伊勢うどん大使(伊勢市麺類飲食業組合&三重県製麺協同組合公認)が、いやまあ要するに私が、讃岐うどんの本場である「うどん県」に勝手に乗り込みました。

 ふわふわもちもちな食感を身上とする伊勢うどんと、つるつるしこしこが持ち味の讃岐うどんは、うどんの多様性を象徴する対照的な存在にして最大のライバルです。だからといって、敵視していても何も生まれません。だいいち、現時点では人気でも存在感でも圧倒的な強さを見せる相手に対して、すするのはいいとして無駄に噛みつくのはみっともない態度。「太いうどんほどよく吠える」という言葉ができてしまったらたいへんです。

 勇んで乗り込んですぐさま、有名店を何軒かはしごしました。どこもそれぞれ文句なしにおいしいです。もちろん伊勢うどんだって負けちゃいませんが、長年の伝統と風土が作り出した「芸術品」と言っても過言ではありません。うどんを食べるためだけに何もない田舎町にたくさんのクルマが集まっている様子は、なかなか壮観でとても感動的でした。

 せっかくなので、地元のお客さんに「三重県の伊勢うどんって、ご存知ですか?」とさりげなくリサーチ。「ああ、伊勢うどんねえ。食べたことはあるけど、やわらかすぎて私たちの口には……」と苦笑いされましたが、反論したい気持ちをグッとこらえて「そうでしょうねえ。ハハハ」と愛想よく返しました。いちおう「あれはあれで、おいしいですけどね」とひと言加えたのは、伊勢うどん大使としての意地であり責任感です。

 うどんに限らず、私たちはいろんな場面でライバルを意識し、ライバルと対峙せざるを得ません。今日も各地の居酒屋では、モテモテで仕事もできる同期の悪口を言ったり、同じ業界の最大手の会社を批判したりしている人がたくさんいるでしょう。しかし大人としては、そうやって目先の溜飲を下げたくなる甘い誘惑をグッとこらえたいところ。

 相手が強大な存在の場合、アラを探して少しでも引きずりおろそうとしたところで、こちらの小ささが際立ってしまうだけです。だったら相手のすごさを素直に認めたほうが、余裕たっぷりで器が大きな人間に見えそうだし、そんなふうに言える自分に深い満足感を覚えたり、何となく優位に立った気になったりしてもかまいません。

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