加齢とともに増える身体の異変。「年のせい……」とやり過ごしてしまうことが多く、症状が軽く一過性ならなおのこと、病院で検査を受けようとは思わないだろう。ところが、見逃せば最悪の場合、死に至る怖い「警告症状」もある。その見分け方を名医に聞いた。
中高年になると、これからしようと思っていたことをふと忘れてしまったり、人の名前を思い出せないことが増えてくる。加齢によるただの物忘れなのか、それとも……。
「85歳以上の4人に1人が罹る認知症は身近な病気になりつつあります。物忘れがひどく、認知症を心配して診察に来る方もいますが、自分で物忘れを自覚している場合は問題ないケースがほとんどです。そもそも認知症は『忘れた』という自覚症状がないことが多いのです」
そう話すのは、東京「多比良医院」院長の多比良清医師。では、認知症と単なる物忘れの見分け方は?
「認知症は昔のことは覚えていても、直近のことをすぐに忘れてしまいます。たとえば朝食を食べた記憶がまったく抜け落ちていることがあります。おかずが思い出せない程度なら、心配ありません」
兵庫「はりま病院」院長の大田博之医師もこう話す。
「年齢を重ねると脳に膨大な記憶が蓄積されます。雑然とした倉庫で探し物が見つからない状態で、認知症や脳腫瘍とは無関係なことが大半です」
注意したいのは、「理解力や計算力は正常なのに記憶だけが曖昧」といった「まだら認知症」の症状がある場合。
東京「くどうちあき脳神経外科クリニック」院長の工藤千秋医師が語る。
「40~50代の働き盛りでも若年性認知症のひとつである『脳血管性認知症』を発症することがあります。
原因となるのは大小の脳梗塞をはじめとする脳の血管障害。出勤前に確認したはずの大切なアポイントを完全に忘れてしまったり、日常的な仕事が円滑に処理できなくなった、やり残しが増えるようになったなどの症状が重なった場合は『加齢のせい』と片付けず、専門医に相談することをお勧めします」
工藤医師によると、肥満体形の中高年男性に多い「睡眠時無呼吸症候群」も脳へのダメージを蓄積するため、脳血管性認知症に移行しやすくなるという。
※SAPIO2014年4月号