国際情報

北朝鮮 兵士入隊基準引き下げで身長150cm→143cm、体重48kg→37kg以上に

 張成沢・前国防副委員長の処刑後、ナンバー2の座についた崔竜海・軍総政治局長の粛清説が流れた。恐怖政治が敷かれる北朝鮮で、権力中枢に何が起きているのか。

「昨年、わが党は党内に蔓延る汚物を除去した」──。

 金正恩は今年頭の辞で、義理の叔父である張成沢とその一派の粛清劇をそう表現した。「逆賊は容赦しない」という意思を改めて示すことで、独裁体制をより強固にする狙いがあったと見られる。

「金正恩は、中国との太いパイプを背景に経済開放を独断専行し、利権と影響力の拡大を狙った張成沢を許さなかった。粛清を首謀したのは、対立関係にある軍総政治局長の崔竜海と労働党組織指導部第1副部長の趙延俊だ。彼らは公安組織の国家安全保衛部を巻き込み、張の不正を暴くことで正恩に忠誠を示した」(韓国紙記者)

 デイリーNK東京支局長の高英起氏は「張成沢の粛清後、金正恩の暴走はさらに加速した」という。

「崔竜海は、今年に入り数週間も公の場に姿を見せず粛清説が流れました。実際は糖尿の悪化による体調不良でしたが、いつそうした状況に追い込まれても不思議ではない。私は、金正恩政権の最高幹部は崔ではなく、趙延俊と金慶玉(いずれも党組織指導部第1副部長)と見ています。また、正恩の事実上の右腕は張の摘発を指揮した国家安全保衛部長の金元弘で、徹底した監視・統制を敷いて党や軍に睨みを利かせています。ひとたび正恩の不興を買えば、たとえ最高幹部でも張と同様の運命を辿るでしょう」

 粛清の嵐は政権外部にも及んでいる。3月12日の「ラジオ自由アジア」は北朝鮮情報筋の話として、張成沢に近いと見られる国民的俳優や歌手40人余りが強制収容所に収監されたと報じた。

 そうした正恩の圧政に、軍や国民は疲弊している。東京新聞編集委員の五味洋治氏が語る。

「軍の最前線部隊では栄養失調が蔓延し、脱営兵が例年の7~8倍に増えています。兵士の入隊基準は1990年代の『身長150cm、体重48kg以上』から、『143cm、37kg以上』に引き下げられたとの情報もあります」

 一般市民の食糧事情も深刻さを増している。

「配給制度が崩壊している北朝鮮は昨年、全国民への配給正常化を宣言したが未だ実現せず、今年1月に米が配られたのは平壌市民だけでした。現政権下では中朝国境警備が厳重になり、国民の経済活動は停滞しています」(高氏)

 山梨学院大学経営情報学部教授の宮塚利雄氏もこう話す。

「現地情報では今冬も多くの方が飢えと寒さで亡くなっています。張成沢の処刑後は思想統制もより厳しくなり、いまや金ファミリーの話題は最大のタブーとなっています」

※SAPIO2014年5月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン