芸能

平幹二郎 犬のように歩き教わった「消して、存在する感覚」

 活動歴が50年を超え、80歳の今もなお舞台で活躍する俳優、平幹二郎はキャリアを俳優座の座員としてスタートさせた。俳優座時代、同時期に活躍した仲代達矢主演『ハムレット』でホレイショー役を演じたとき、演出の故千田是也さんから受けた教えについて平が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載「役者は言葉でできている」から抜粋してお届けする。

 * * *
 平幹二朗は高校時代、映画監督を志す。当時は監督になるには大学を出て映画会社に就職し助監督として採用されるしか道はなかった。が、平は数学が全く出来なかったため大学進学を諦めていた。そんな1952年、19歳になった平は演劇雑誌で俳優座養成所の募集広告を見かける。演出部もあるため、ここをきっかけに映画監督になる道が開けるのではと思ったのだ。

「演劇を目指した演劇青年ではありませんでした。ですから、養成所の後で俳優座に残ることもできたのですが、本気で演劇をやる気は僕の中にはなかった。

 本気になったのはそれから4、5年経ってからです。その頃は東映でたくさんの時代劇映画に出ていました。映画に出ていると俳優座の芝居での役の付き方が少なくなっていった。そんな時に、小沢栄太郎さんがシェイクスピアの『十二夜』を若手だけ使って演出されることになったのですが、主役は下級生たちで、僕は一言くらいしか台詞のない船乗りの役でした。

 京都で時代劇の撮影をして、東京で舞台の稽古をして京都へまた戻るという生活で、稽古に身が入ってなかった。そこを小沢さんに見抜かれました。『お前、やる気あるのかよ!』と怒られまして。どんな役でも一生懸命やらなければならないのはよく分かっているのですが、つまらない役はやっぱりつまらないですから。

 ちょうど千田是也さんが田中千禾夫さんの『千鳥』という芝居を同時上演することになり、いい役で僕を引き抜いてくれたんです。それがなかなかいい作品だったので、少し本気が出てきた気がします」

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
吉田鋼太郎と夫婦役を演じている浅田美代子(『あんぱん』公式HPより)
『あんぱん』くらばあ役を好演の浅田美代子、ドラマ『照子と瑠衣』W主演の風吹ジュン&夏木マリ…“カッコよくてかわいいおばあちゃん”の魅力
女性セブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)
宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も
週刊ポスト
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン